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9月・承服のサキュバス
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しおりを挟む棚卸し打ち合わせを済ませたある日の夜。
唯が駐車場の車に近づいて解錠すると、影から葉山が顔を出した。
「おつかれさまです!」
「きゃあ!あ、あ?…お前か?」
「すみません、ユイさん!驚かせるつもりだったけどここまでとは」
「……お前、…コロすぞ。…なんや?」
ばくばくしている心臓を押さえながら唯が尋ねる。
「いえ、あと4日で棚卸しでしょう?忙しくなると構ってもらえないから、泊まり込もうかと思って♡」
「は?」
「そろそろ発情期だし、ね、いいでしょう?」
「……プライベートの時間も欲しいねんけど」
意外と悪くない提案に、彼女の心は揺れて却下しかねた。
「僕の存在は無視してくれていいですから、お願いします。構ってもらえないと、僕死んじゃいます」
「えぇ……はぁ、ええよ、乗れ」
「ありがとうございます♪コンビニ寄って、甘い物買って帰りましょう」
「……」
可愛い、これは彼女の本心からの気持ちである。
唯はシートベルトを着けエンジンをかけてまず車内を暖め、かねてより考えていた事を葉山へ提案する。
「…なぁ龍ちゃん、うちから通うと交通費の不正受給にならへんか?」
「そう、ですね…住所変更かけましょうか、ユイさんの家に♡」
「あのな……龍ちゃん、うち、次の2月で社宅の契約更新やねん。もう住宅補助も切れてるけど、近くて便利やから住んでて」
唯達の会社では、転勤者への住宅補助は3年しか払われない。
満期になると社宅アパートを出て行くのが通例となっているが、不満がなければ住み続けることもできるのだ。
「ええ、」
「……お前、春から、一緒に住むか?」
「!」
思いもよらぬ唯の提案に、葉山は目を剥いて固まる。
「ぷ、プロポーズ…」
「ちゃうわ、嫌ならええで、安いとこにする」
ふぅ、と息を吐いて車を出す唯へ、葉山は
「嫌なわけないでしょう、ぜひご一緒させてください!……うれしい…5ヶ月後ですか?長いな、年末には引っ越しましょう?」
と気の早い話を捲し立てた。
「早い…」
「結婚情報誌買わなきゃ…」
「………早い」
二人はコンビニでケーキを買い、住宅情報誌を参考に貰って唯の家へ帰るのだった。
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