枯れかけのサキュバス

茜琉ぴーたん

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10月・展開のサキュバス

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 10月初旬の夜。

 とあるラブホテルの一室、ベッドに腰掛ける葉山はやまの脚の間には、紅潮こうちょうした顔でモノをくわえるゆいの姿があった。

「……」

自身の唾と葉山の体液が口内で絡み、ちゅぱ、ちゅぱといやらしい音がする。

「あっ…ふ…は…んっ…」

「そうそう…上手ですよ…ユイさん」

葉山もまた頬を紅く染めこの女をひざまずかせる征服感にうっとりとし、前後に動く頭に合わせて揺れるその髪をひと掴みし、くるくると指に巻き付けた。

「はっ…ふ……ねぇ、いつまで…?」

「僕が満足するまでですよ、ほら、アリス頑張って♡」

「んん…あム…」

唯はあらゆる事に興味本位で挑戦するが、自らすることはあっても強いられて何かさせられる事は大嫌いである。

 今夜のこの口淫フェラチオはもちろん、葉山がさせている。

 その証拠に、情けなくモノを咥えながらも唯の眼は葉山をギンと睨み、眉間に険しく縦筋が立っている。


 そしてその表情と対照的な、異質な雰囲気をかもすのが今日の彼女の装いであった。

 白と水色のアリスをモチーフにしたワンピースに揃いのヘッドドレス。

 足下は五線譜と音符の刺繍のオーバーニーソックスと、脱いでしまったがこれもテカテカしたパンプス。

 どれもレースとフリルがたっぷりの、いわゆるロリータスタイルだ。

 これも彼女の意思ではなく葉山が提案して着せたもので、化粧もいつもと違いつけまつげを二重に付け、垂れ目メイクを施している。





 棚卸しが済んで店が落ち着いた10月初旬、若手有志によるお疲れ会が開催された。

 簡単なハロウィンも兼ねると幹事が言い出し、同僚・刈田かりた美月みつきの提案でギャル仮装をすることとなった。

 そしてその服装を自分に用意させろと葉山が出張ったのだ。


「はい、どうぞ」

 ハロウィン当日大きな紙袋を渡され、出してみると有名ロリータ服ブランドの衣装ひと揃いであった。

 アリスをイメージした襟付きワンピース・ヘッドドレス・靴下・靴、小物に下着。

「こっ、こんなん着れるかぁ!」

「えー、任せてくれるって言ったじゃないですか。せっかく三宮まで買いに行ったのにぃ」

「お前…これを直接…⁉︎」

おそらくその店舗に男性客は居ないだろう、訪れたことのない唯でもそれくらいの想像はつく。

「ユイさんの特徴を言って、選んでもらいました」

「ぐぁ…」

 自身の身長に合わせて店員が選んでくれたのだろう、体に当ててみれば丈もサイズもピッタリである。

「ね、これしか無いんですから着ましょうね」

「いや、そもそもが有りもんでなんとかしようってメイク頼みのギャルになったんやぞ…うちだけこんながっつり…」

「じゃあ、ヘッドドレスは外しても良いですから」

「解決になってへん…」

「靴下も…はぁ…セットで万札が8枚くらい飛んでったのに…」

勝手に買ったくせに、葉山は絶望的な表情をして唯をチラと見る。

「…ワンピースは着る、それでええやろ…」

 決して、葉山が可哀想になったからでは無い、この男はふた言目に「淫行」を持ち出して脅すからだ。

 二人は心から好いていると認識し合ったものの、唯は嫌なことは嫌と断るし、葉山は相変わらず彼女を困らせることを自発的に仕掛けてくる。

「良かった、また脅さなきゃいけないところでした。淫行コーナー長♡」

「脅しとるやないか」


 そして会に参加し、帰りの車内でフル装備を強いられ、葉山の運転でそのままホテルへ入ったのだった。





「はっ…っ…ぶ…ん…」

 彼女は意図してないだろうが上唇が先端の段差を撫でて、葉山はその刺激がくる度に顔をしかめる。

 だがもちろん、決して苦痛なのではない。

 ニヤニヤとしたいところを、唯より上位に立つために我慢しているのだ。

「もう、いいですよ、」

 唯が口を自身のモノから離すのを見てから、リードをグイッと上へ引くと、上げざるを得ない顎先に垂れた唾液が光った。

 葉山が手にしているリード、その先は唯の白い首にはめられた青い革の首輪に繋がっている。

「ぐっ、……ふぅっ…ふ…」

 可愛い狂犬は目と口の周りを濡らしたぐしゃぐしゃの顔で飼い主を睨んだ。

「頑張りましたね」

 タオルで口周りを拭いてやる最中もその目つきは変わらなかったが、褒められればそれなりに嬉しかった様で、照れたのか目を伏せてしまう。

「ぷは…」

「メイクが崩れてきたので、ここだけ洗いましょう。来て下さい」

 葉山はパンツを履き直してリードを首輪から外し、唯の肩を抱いて洗面所へ向かった。

 タオルで服が濡れないようガードして、アメニティからヘアバンドとメイク落としを差し出す。


「これはご自分でどうぞ」

 唯は黙って受け取り、葉山はその素顔が露わになるのを興味深そうに見守っていた。
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