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7月・枯れかけのサキュバス
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しおりを挟む「ユイさん、背、伸びました?」
二人は並んで、暗い歩道を大通りへ向けて進む。
「おちょくってんのか。仕事中より低いやろ」
「いえ、それでも昔より伸びたと思ったんです。…さすがにヒールは履きませんか」
「歩くの分かってて、疲れる靴履かへんよ。これも3センチは高なってる」
高いヒールは仕事中だけ、楽に歩けるスニーカーを普段履きにしているがインソールはしっかりと詰めていた。
「仕事もそれでいいじゃないですか。社則では、女性は白のスニーカーならOKとされてます」
「んー、舐められんの嫌やねん」
「へぇ…」
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この強気さも変わってはいない、青年はひっそりと彼女の愛らしさを噛み締める。
歩いて3分、深夜まで営業のディスカウントショップで「葉山お泊まりセット」を買い込む。
「パジャマもありますね、どれがええと思います?」
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「…なんでもええやん」
「もー、」
葉山は不満そうな声を発した後に唯の肩を抱き、
「確かに、裸の方が楽ですものね、いつでもシたい時にできますし」
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「これが可愛いんちゃうか」
とキャラクター物のパジャマを選んでやった。
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「ふん…」
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「ユイさん、選んで下さい♡」
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「…サイズどれでもええんか?これ買うてまうぞ」
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「どっちがや、自分で選びな。…ちょっと自分のもん選んでくるわ。10分後にレジ前で」
唯はそう吐き捨てると、さっさと背を向けてお菓子の棚へ消えて行く。
そして10分後に唯がレジ前へ行くと、葉山は既に会計を済ませていた。
「…お前、財布持ってんのか」
「はい、寄り道するための嘘でした。へへ、…ヴっ⁉︎」
怒れる唯は葉山の鳩尾に掌底を入れ、咳き込むのを放ってレジへ並んだ。
・
買い物袋を下げて、二人で家路に着く。
今年は遅目の梅雨で気温が下がりがちだがさすがに7月、歩けばじっとりと汗が滲んでくる。
「あ、ご飯どうします?コンビニ寄りますか」
「うちは要らん…セックス前は食わへん」
数年前からのルーティーン、それは葉山も覚えていた。
「…変わってないんですね。なら僕も我慢します」
「フン…朝飯は、パンぐらいなら出したるで」
「!……新婚さんみたいで楽しいですね」
「どこがやねん」
先程までの緊張が解けて唯は開き直って、まるで地元にいた時のような気の抜けた開放感がある。
「パジャマ、ユイさんとキャラお揃♡」
「なんで知ってんねん…きしょいな」
「干してあるの見ました。あきませんよ、あんなの外に干したら。女性の部屋だって丸わかりです」
「下着は中に干してるよ…」
「男物のパンツを干しておくと、防犯になるってテレビで言うてましたよ、僕のを吊しときましょうね」
「やめろや……ふぅ…」
端から見れば仲睦まじいカップルだが、男の心にはドス黒いモノが渦巻いていて、家が近づくごとにその色が漏れ出しているようで唯は油断ならない。
一方でこれからこの男に抱かれる、それを予期した体がウォームアップを始めていて、何年経っても変わらない自分の性を恥じる。
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