お嬢の番犬 ピンク

茜琉ぴーたん

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ピンク

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 垣内かいちは先程までの事を貴治たかはる氏・警察の処遇も含めて和久わくへ呑みながら教えてやった。


「ふーん、まぁ分かってくれてるんならえかったやん。お嬢を守るためやて」

「まぁなー、査定上がるかもしらんよ、へへ」

「どやろなぁ……それが仕事やしな…」

「あんな走ったん久しぶりや。体バキバキよ、労災やで。大体よ、俺らボディーガードちゃうねん。遊撃部隊ちゃうねんから。ただの付き人やんか、せいぜい見た目で用心棒なるくらいの」

「せやなぁ、俺も体でチャリンコ止めたんは初めてやで」

和久は原因となった垣内を睨みながらコキコキと肩を鳴らす。

「悪かったて…ほい、ナッツやるから。…ちゃんとしたの雇った方が安心やのにな」

「せやなぁ、でも旦那さん直々のご指名やったからな」

「ミルクやってたら勝手に懐いてんもんな」

みやびの母は貴治氏の一人娘で、見合いで婿殿と出会って結婚、しかし産後に病んでしまい最期は病院で息を引き取った。


 和久はカラカラとグラスの氷を鳴らし、薄く目を開いて垣内を見遣って口を開く。

「明日は…歯医者やな」

「俺らも中で待たなアカンの?早いのに…怠いな」

「見届けてやりぃな。後々べっぴんになんでぇ…」

ナッツを噛み砕いて和久は穏やかに笑い、それが誘い水となって垣内も口元が綻んだ。

「……せやろな…せんでもべっぴんになるやろけどな…」

「じきに婿取りよ……どんな気持ちやの、お前」

「ん?…なにがよ」


 ガシガシと噛んでは酒で流す垣内へ目線だけチラリと向けて、和久は一番知りたかった事を尋ねる。

「垣内お前、可愛いお嬢が早う16になればて思てんねやろ?」

「…!」

 垣内はアテのナッツを摘み損ね、爪で弾いた一粒が部屋の隅へコロコロと転がって行くのを目で追った。
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