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ピンク
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しおりを挟むその夜、警察から探りが入ったと、垣内は当主・貴治氏の部屋へ呼び出された。
話を聞けば、そもそも警察は不審な自転車男の件で通報されて商店街へ向かってきていたそうだ。
数日前から挙動が怪しく、商店街に入る前の路地で住民に殴りかかり、そこで通報されていたらしい。
しかし警察が到着してみると男は地面にへたって泥酔状態、そして遠くに走り去る黒服たち。
目撃者の話を聞き、怪我こそさせてはないものの、過剰防衛スレスレなので一応注意に来たとのことだった。
雅とお付きの2人はなかなかにこの辺りでは有名なのである。
ちなみに自転車男は酒に酔っていて無意識に煙草を吐いたらしく、そちらは酒酔い運転と薬物使用の然るべき取り調べを受けているらしい。
「んでよ、未遂やった言うけどや、お嬢の足が出とったら火傷になっててんで?ほんまにアイツに悪意が無かったかなんて分かれへん。なんや起こってからや遅いやんか、俺の…いや、…女の子やねんから」
垣内は貴治氏に、事の顛末を割とフランクに語る。
「まぁお前の言い分も分かる、孫を守るために動いてくれたんは有り難いがなぁ。…そもそもクレープ屋へ行こう言うたんは?」
「ワシですぅー」
そもそものお出かけの首謀者は自分だった、しおしおになりながら垣内は終わったとばかりに項垂れた。
「今は真っ当とはいえ、昔買った恨みはあるかもしれん…拐かす輩がおるかもしれん、街を歩きたいならそれ相応の備えをして行きや。…まぁええわ。次は無いで、気を付けてな」
「はい、はい…」
「あと、雅に暴力行為は見せたらいかん」
「はい、ごもっとも…」
頭に血が上ってこんな事になってしまった、しかも雅が制止しなければすぐに反撃していただろうし、それこそ過剰も過剰な暴行になっていたことだろう。
項垂れてたっぷり反省したと見たところで、貴治氏は毎度お馴染みの質問を垣内へ投げる。
「ところでお前……結婚の予定とかは無いんか?連れの和久は身を固めたろう」
こうして孫娘に関わる用事で会う度に同じ事を聞かれる、しかし垣内の答えは毎回ほぼ変わらない。
「いやぁ…俺はまだ…少なくともあと4年…いや、3年10ヶ月くらいはかかる思いますけど」
いやに具体的な年数、貴治氏は月日を経るごとに減っていくその数字をしっかりと気に留めて、「そうか」と垣内を部屋へ帰した。
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