お嬢の番犬 ピンク

茜琉ぴーたん

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ピンク

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 すかさず垣内かいちみやびを背にして間に入って男へ凄み、

「兄ちゃんな、コレ、タバコな、兄ちゃんが吐いたやつ。拾うて、うん。んで、ココな。お嬢の靴の方にタバコ飛んでん。これサンダルやったら火傷ヤケドしとったかもわからんよ?どうすんの、いや、脅迫とちゃうよ。どうすんのかなー、いうて。なぁ、答えてよ、なァて」

目を剥き半面を歪ませ、時折ニヤニヤとしながらヤンキー坐りで、煙草が落ちた場所へ座らせた自転車男を言葉でいたぶる。

「誠意とかそういうのちゃうねん、ヤクザやないんやから。ワシら堅気カタギよ?ほんまに…なァ、一言、お嬢に謝ってんか。………てか兄ちゃん…酒臭いな、飲酒運転やろ……聞いてんの?………あ、………あんた、クスリも何かやってんな?」


「あ、垣内、そこら辺でやめときや」

結局自分の電子マネーで支払った雅が、パスケースをポケットに収めながら尋問中の垣内に声をかける。

「なんや、お嬢。コイツが謝るまでスイミングは行かれへんぞ」

「おい垣内、そんくらいにしとけ、捕まんぞ」

和久わくもそう忠告すると、注文品を受け取った雅の側へ寄った。

「見て、和久!このクレープ、キレイ♡」

「ほんまやな、お嬢。美味そうやん」

雅は縦に持ってもヘタらない程しっかりと巻かれたクレープを受け取る。

 そしてその芸術的な美しさにまた目を丸くし、子供らしくはしゃぐ主人を優しく見つめた。

「和久まで何やねん、このまま退けるかぃ…おう、コラ…」

「ちゃうて、お巡りや」

そう言って和久は両手にクレープを持った雅の腹を脇に抱え、垣内と自転車男を置いて駐車場方面へ走り出す。


「は、」

男の胸ぐらを掴んだ垣内が反対方向へ顔を向けると、長いアーケード街の端の方に確かに交番から派遣されたであろう制服警官の姿が見えた。

 今この場面だけ見ると、黒服の垣内が一般人にいちゃもんを付けているようにしか見えない。

 このままいけば、まず確保されるのは垣内の方だろう。

「うぉ、ヤバいやん、あ、コラお前!うわ、逃げよった、オイこらァ、お嬢ー!和久ー!!」


 警官たちが到着するまでに垣内は自転車男を指して「コイツが悪いんです。酒の匂いします」とクレープ屋の隣の八百屋に熱弁し、それから必死で雅達を追いかけ商店街を後にした。
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