お嬢の番犬 ピンク

ピンク

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　交差点から片側二車線の道路を越えて商店街へ、和久わくは大体の位置を確認してから一旦路肩へ停車する。

「そこ狭いから、この車やと入られへんな。駐車場探しとくから、垣内かいちとお嬢は先歩いて行ってきたら？」

「ハァ？使えんなぁ、ここ停めときゃええやんけ」

「警察きたらヤバいやろ。ほら垣かいちゃんと行ってき、お嬢」

「…うん」


　垣内は先に降りて小さく咳払いをし、後ろのドアを開けて雅みやびを降ろしてやる。

　和久は車を出して、ふたつ先の十字路でパーキングを見つけたのか左折して行った。


「なぁお嬢、金持ってるか？」

「は？奢ってくれるんやろ？」

「いや、そのつもりやってんけど、小銭が…」

ポケットの小銭入れを振って音を聞き、垣内はなんとなくの残額を予測した…クレープ１個買えるかどうか、微妙なラインである。


「あ、あれやな」

　メイン通りの中程にそのクレープ屋はあり、注文カウンター前には５～６人の行列ができていた。

　列の最後尾へ並び、これくらいならスイミングに間に合いそうだと垣内はその旨和久へメッセージを送る。


「電子マネー使えるやろか…聞いてみよ。和久のは何にする？片手なら運転しながら食べられそうや、」

列が少し進み、店の壁面に貼ってあるメニュー表を爪先立ちで見ながら、雅は垣内へ尋ねる。

「あいつは食わへんやろ、お嬢は好きなの選びや。あ、追加トッピングは無しやで」

「うん…」

　基本メニューなら手持ちの小銭でなんとか買えそうだ、垣内はけち臭いことを堂々と小学生へ向かって言い放った。