お嬢の番犬 ピンク

茜琉ぴーたん

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ピンク

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「………はぁ、明日歯医者か、嫌やなぁ。行かなダメ?」

道草が決まったものの、みやび嬢は浮かない顔でため息をく。

 彼女の明日の予定、午前中から歯医者で歯列矯正を受けることになっているのだ。

「治療はあれへんよ、旦那さんから頼まれてるからなぁ」

 旦那、とは彼女の父親のこと、現場を退いた祖父に代わって家業の長を務める娘婿である。

「歯医者のあの音聞くんムズムズして嫌やねん…ちょっとガタガタしててもええやんか…垣内かいち…うち、そない見苦しい?」

「いや、充分揃ってる、可愛いけどな、だんだんズレてくるかもわからん。噛み合わせも悪うなるし、ほれ、俺みたいになったら困るやろ」

そう自虐的に言って垣内は振り返り、イーっと全体的に前に出た歯並びを彼女へ見せてやる。
 

 和久わくもミラーを覗き、

「せやで、お嬢。もう2・3年もしたら、縁談が来るかも分からんから。キレイにしとって損はあらへんよ」

と後押しをした。

「エンダンって何?」

「結婚の話よ、見合いとかな」

「「はァ⁉︎」」

 小学生に対してのあまりにも突飛な話に、雅と垣内は揃って顔をしかめる。

「お見合いって…着物着てするやつ?そういうのしなアカンの?」

「もちろん恋愛結婚でもええよ。まぁ先に備えよってことよ、なぁかいちゃん」

 同意を求められたものの垣内は「うーん」と早過ぎる話題に難色を示し、和久は交差点の入り口で角の交番をチラ見して信号で停止した。
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