お嬢の番犬 ブルー

茜琉ぴーたん

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 ちなみに私立の女子校に入れたのは垣内かいちの提案で、学費は身に余る彼の給与から捻出されている。

 歯の矯正だってそう、永久歯が生え揃った今から早めに対策させたいと垣内が婿殿へ直談判したのだ。

 歯並びは如実に親を語る、育ての親に歯並びまで似てしまえば言い逃れができなくなる。


「お嬢が俺に惚れるんは計算外やったよ…さっき庭で好きや言われたわ…」

垣内はウィスキーを喉に通し、焼ける食道の感覚に目を剥いて酔いしれる。

 年頃になれば娘は男親を敬遠するもの、そう仕向けるために女性と遊んだように見せたり下ネタを言ったりしたのに…結局は垣内の品位が落ちただけで彼女の恋心は変わらなかったのだが。


「お前、初めて告白されたんと違う?」

「ほうよ、娘にな…『大きくなったらパパと結婚する』のやつや…ちょっと年齢が行き過ぎてるけどな…」

 狭い世界で繰り広げられた愛と恋、みやびは広い世界で相手を見つけて欲しい、それが世話役二人の共通の願いである。


「恋に夢見過ぎやね…割と女子扱いして来たつもりやねんけど」

「いや男ばっかりやから…ガサツに育て過ぎたわ…まぁ初潮来たから大人しくなるんちゃう?」

「んな事言うと嫌われんで、」

和久わくは袋に残ったナッツを全て摘んで口へ放り込む。

「言うのに嫌われへんかったのよ、ワクちゃん…何でも受け入れてまう、危ないで、お嬢はろくな恋愛せぇへんかもしれんぞ…」

「せやな、恋愛ドラマでも見せて感覚を治してかんと…」


 この夜、世話役二人の育児論は日付が変わってもしばらくは続いていた。
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