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しおりを挟むその髪を靡かせて殺気を纏い…垣内は防げなかった自分を悔いてガチガチと震えるほどに奥歯を噛みしめ、眉間には怒りで深いシワが寄った。
「ゴルぁ!何さらしとんねん!止まらんかワレぇ‼︎」
垣内に気付いて自転車はスピードを上げる、しかしリミッターの外れた狂犬は俊足だった。
前傾で走ってそのまま腕を伸ばし、男の首へ絡めて自転車ごと引き倒す。
ガシャン、と鋼とアルミの塊が横たわる衝撃音がアーケード下に響き、続いて怒り狂う垣内の罵声がこだました。
「おうコラ、うちのに何してくれとんねん、火傷しとったらただじゃおかんぞ、来いオラぁ!お嬢んとこ行って手ぇ着いて謝らんかボケぇ‼︎」
金属音と怒声、人が砂袋のように崩れ落ちる光景。
そして垣内のあまりの剣幕に雅は慄き、ドーナツ屋のカウンター前でぶるっと震えていた。
「聞いてんのかコラ、」
腕を掴んでも動かない男に痺れを切らして垣内が蹴り上げようとしたその時、
「おい!おいおい、やめぇ、コイツが何してん」
と遅れて来た和久が止めに入る。
「タバコ投げよってん、お嬢に当たってんぞ!おぅ、起きやコラ」
「ほぉ…お嬢に」
それを聞いた和久は丸い目を薄くして舌打ちをして、怪力をもって倒れた男の首根っこを掴みドーナツ屋の方向へ引っ張って歩かせた。
「アンタええ度胸してんなぁ、わざとやったらうちの親父さん黙ってへんけど…ほら、歩け」
ドーナツ屋の前に佇む雅の傍、落ちた煙草を目掛けて和久は男を振り投げる。
「すまん、ひとりにして…焦げたか?肌は?当たってへんか?」
小走りで戻った垣内は主人へのフォローに入るも、
「あだって、ない…でも…焦げちゃった…ふあ…」
化繊のスカートの尻の部分には繊維が溶けてできた小さな穴、その穴からは薄いピンクの下着が僅かに覗く。
「…歩けるか?お嬢」
ポケットから財布を出して和久が雅へ近づく、彼女は下唇を噛んで
「大、丈夫…」
と青ざめた顔で嘘をついた。
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