9 / 27
9
しおりを挟む商店街は平日ということもあって人もまばらで、若者はここと数件先の喫茶店に居るくらい、あとは地元客が夕飯の買い出しに訪れているだけの人出の少なさだった。
「車、停めたから和久も向かってきてるわ……第二パーキングね」
「そう、じゃあ自分で買うやろか?でもはや兄よく知っとったね、ドーナツ屋さんができてるやなんて…」
少女は上目遣いで垣内を見つめ、男の女子学生並みの耳の速さに感心する。
「いやぁ、この前寝たお姉ちゃんから聞いてん。人気らしいよ、」
「…寝たって?」
「お泊りよ、……お子ちゃまには分からんやろ」
「…ふーん」
「なに、あかんかった?」
「別に…好きにすればええけど…」
「ん…あ、お嬢こっち、」
商店街の後方からフラフラと、咥え煙草の男が自転車で迫ってくるのに気付き、垣内は雅の肩を押して自分の腹の前に移動させた。
「なに?」
「轢かれたら危ないからな」
「轢かへんやろ…」
普段はおちゃらけているのに、たまにこうしてボディーガードのようなことをしてくれる、雅は照れて再びメニュー表を見上げる。
「わからへんよ…お、前詰めや」
「うん…」
肩に乗せられた垣内の手の感触にじんじんとこみ上げるものがある、雅は頬を染めはにかむも幸い彼からは見えない。
何を隠そう雅嬢は、この垣内にほんのりとした恋心を抱いているのだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
有能侍女、暗躍す
篠原 皐月
ファンタジー
貧乏子爵家の長女として生を受けたエルセフィーナ(ソフィア)は、十二歳の時に、運命的な出会いをする。しかしそれはとんでもない波乱に満ちた、周囲を嘆かせる人生への、第一歩だった。訳あって王宮勤めをする事になってからも、如何なく有能ぶりを発揮していた、第一王女シェリル付き侍女ソフィアと、彼女に想いを寄せる元某国王子サイラスが巻き込まれる、数々の騒動についてのお話です。
【猫、時々姫君】【ものぐさ魔術師、修行中】の続編になります。



愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
影の弾正台と秘密の姫
月夜野 すみれ
恋愛
女性に興味がなくて和歌一筋だった貴晴が初めて惹かれたのは大納言(上級貴族)の姫だった。
だが貴晴は下級貴族だから彼女に相手にされそうにない。
そんな時、祖父が話を持ち掛けてきた。
それは弾正台になること。
上手くいけば大納言の姫に相応しい身分になれるかもしれない。
早くに両親を亡くした織子(しきこ)は叔母の家に引き取られた。叔母は大納言の北の方だ。
歌が得意な織子が義理の姉の匡(まさ)の歌を代わりに詠んでいた。
織子が代詠した歌が評判になり匡は若い歌人としてあちこちの歌会に引っ張りだこだった。
ある日、貴晴が出掛けた先で上の句を詠んだところ、見知らぬ女性が下の句を詠んだ。それは大納言の大姫だった。
平安時代初期と中期が混ざっていますが異世界ファンタジーです。
参考文献や和歌の解説などはnoteに書いてあります。
https://note.com/tsukiyonosumire/n/n7b9ffd476048
カクヨムと小説家になろうにも同じものを投稿しています。

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜
真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。
しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。
これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。
数年後に彼女が語る真実とは……?
前中後編の三部構成です。
❇︎ざまぁはありません。
❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる