お嬢の番犬 ブルー

茜琉ぴーたん

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 冴子さえこの夫でみやびの父・通称旦那さんと呼ばれる婿殿は大変熱心な事業家であり、妻を亡くした後は寂しさを紛らわせるように更に仕事にのめり込むようになる。

 多忙な自分に代わり娘へ尽くしてやって欲しいと婿殿は垣内かいちへ頭を下げて頼み、交換条件として造園の支援や親方・弟子の雇用保証などを提示してくれた。

 身寄りのない親方のために立派な墓も建ててくれた、その点においてはじんせき造園は婿殿へ恩義を感じている。


 なんやかんやあったとはいえ雅が生まれて12年間、垣内も和久わくもそれなりに親心を持って彼女に接している。

 それは決して強いられたからではなく長時間一緒にいて育まれた父性と親子の絆であった。

 彼女が赤子の頃から今まで愛情を注いだつもりだし、彼女の喜びや悲しみは自分のことのように受け止めながらやってきたのだ。


 雅が乳離れしてちょこまか動くようになってからは和久は鍛え始め、彼女を守れる体を作り始めた。

 垣内も細い体を隠すように髪を染めて眉を剃り外見を厳つくしたり、雅が喜ぶからと庭木を動物の型に剪定して大層叱られなどしたものだ。

 庭先で遊ばせたり虫を捕まえたり、自身の仕事を見せることもあった。


 彼らの本業に関してだが、雅を保育園に入れてからは日に数時間の業務、送迎だけになった最近ようやく勤続年数と造園の腕が釣り合ってきたようだ。


 母の分まで父の分まで、決して寂しい思いをさせないように張り切ってきたつもりだが、雅も12歳の多感な時期、ただの世話係では上手くいかないことも最近増えてきている。


 交差点から片側二車線の道路を越えて商店街へ、和久は大体の位置を確認してから一旦路肩へ停車した。
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