お嬢の番犬 ブルー

茜琉ぴーたん

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 みやびの母・神石じんせき冴子さえこは大人しく儚げな女性で、色白で細身で、艶のある黒髪が美しいひとだった。

 垣内かいちの母はこの冴子の乳母を勤めており、ひとつ屋根の下に住む彼らは歳が近いことから幼馴染みとして育つ。

 大人になってからもそれなりに交流があり、屋敷の中で会えば挨拶と雑談の一つ二つは交わすくらいには親しくしていた。
 

 冴子は雅を産んだ後に心身のバランスを崩して起きられなくなり、赤子の世話は屋敷の使用人たちが請け負うことになる。

 新生児の雅は昼夜問わず寝ないしよく泣く子で、誰があやしてもミルクを飲ませてもなかなか落ち着かず、どうしたものかと皆頭を抱えていた。

 しかしある日ひょいと通りがかった垣内が雅を抱いてやると、泣き喚いていたのが嘘のようにすぅと寝入ってそのまま腕の中で5時間も寝続けたのである。

 置けば泣く、抱けば黙るで彼こそが適任と満場一致で可決、垣内はめでたく世話役に選ばれてしまった。

 その頃垣内は就業五年目の庭師修行中、そこから彼の本業は休業状態となる。


 その後冴子は死去、いよいよ垣内は付きっきりの父親業を始めることになる。

 ちなみにだが和久わくが世話係になったのは垣内の推薦によるもので、「自分だけ庭師のキャリアが止まるのは嫌だから」とか「気が知れてるから」とかそのような理由だと人には説明していた。
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