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2022…ヒーローと奥さま(最終章)
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しおりを挟む俺は店長不在のフロアをすぐに離れられずしばらく待機、田仲・湯本さん・美晴の順に個別でことのあらましの聴取を受けた。
そして遅番社員も揃ったところで俺も事務所へ、食いそびれた弁当を食べつつ管理職デスクにて店長と面談する。
「…んで、制服を脱いで買い物に行った訳ですよ、……何で?何でって…コーヒーと甘いもんでも食おうかと思って」
「事務所の外の自販機じゃなくて?」
「…嫁の売上に貢献してやろうと思って…宮前くん、聞かなくても分かるだろ」
俺はカフェの買い物からあったことや会話を簡単に説明、小っ恥ずかしくはあったが夫婦のラブラブっぷりが店長・宮前へと披露された。
「ぷぷぷ…はい、んで立ち去ろうとしたところに田仲さんが来た、と」
「いちゃもん付けて来やがるから反論して、そしたら美晴の方に矛先が向いたのよ。んで整形だなんだって騒ぎ始めた」
「はい、田仲さん側の主張と概ね合致……はい、事実関係は出揃いましたんでお終いです。田仲さんは対人関係でやらかしが多かったですから、そろそろ本部も動くんじゃないですかね」
宮前は手書きの報告書を重ねて自身の弁当を拡げる。
さすがに問題の多いスタッフは辞めてもらうよう勧告でも出すのだろうか、俺はどのような報告書の形になるのか。
そして田仲の暴挙の理由くらいは知りたかった。
「結局、何?やっかみ?」
「それもありますかねー…更年期とか年齢ゆえの制御不能な暴走、診断書をチラつかせてたんでその辺りは法務に任せるつもりですけど……原動力になったのはズバリ、津久井フロア長ですよ」
やはりそうなのか、しかし身に覚えがない。
「いや、何もしてねぇよ?うちの嫁さんが可愛いから妬んだんじゃねぇの?」
「…田仲さん、津久井フロア長の気を引きたかったんですって」
「はぁ⁉︎」
「好みだそうですよ、転勤して以来お近付きになろうと話しかけてたそうです」
「好みって…俺がか⁉︎はぁあ⁉︎」
まさか4回目のモテ期がここで来るとは思わなかった。
自他共に認める不機嫌面に食い付く女が近辺にまだいたとは。
「そんなに卑下されなくても。人の好みは様々ですからね」
「そりゃそうだろうけどよ……はぁ、はぁ…」
「それで、フロア長の妻である津久井夫人が攻撃されてた訳ですよ。奥さんはシカトを貫いてたみたいですね、結構普段から言われてたみたいですよ?聞いてませんか?」
「人付き合いを詮索されたことはあった。あと整形か尋ねられたとも…でもそれは泉さんから聞いたんだ。本人の口からは聞いてない…いつも美晴は、俺が聞き出さなきゃ言わねぇんだ…」
美晴の証言のメモを読ませてもらうとかなり酷いというか田仲からの身勝手な侮辱の言葉が並んでいた。
差別と偏見に満ちた汚らしい言葉たち、ここまで言われながら俺に黙っていたのかと美晴の方へ俺は怒りたくなる。
どうして相談しなかったのか、軽口の域を超えているのに上司に訴えなかったのか。
俺では解決できないと思われていたのか、それとも平気だったのか。
宮前は「後はお家で話を聞いてあげて下さい」と昼食に入り、俺はただ悶々としつつ愛妻弁当を空にした。
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