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2022…ヒーローと奥さま(最終章)
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しおりを挟む職務放棄はできず働くこと数時間。
昼休憩を取るタイミングで俺は制服を脱いで美晴がいるカフェを目指した。
「(…真面目に働いてるね)」
コーヒーサーバーを拭く美晴のポニーテールの根本には俺がプレゼントしたシュシュが巻かれている。
細やかで上品なマーキングに我ながら優越感を得る。
「すみません」
「はい、いらっしゃ…い…ませぇ♡」
振り向きざまに俺を確認した美晴は口元がゆるゆるになって、昨夜のワンシーンを思い出すようでこれまた可愛かった。
「ホットひとつ、テイクアウトで」
「はぁい」
「お姉さん、他におススメある?」
「え、えーっと…このスコーンはコーヒーに合いますよ」
「ん、じゃあそれもひとつ。以上で」
「はい、かしこまりましたぁ」
お勧めの紹介を覚えたのか、ランクアップしたじゃないか。
嫁の成長をほくほく喜んで会計まで済ませてもらう。
「少々、お待ち下さいね」
「うん」
いそいそと冷蔵庫から業務用冷凍スコーンを取り出して電子レンジへ、表からは見えないが中は見たことがあるのでだいたい音で動線が分かる。
サーバーにカップをセットしてホットのボタンをポチリ、チラチラこちらを確認しつつ目が合えばご褒美を貰った犬みたいに目をまん丸にして口角を上げ笑う。
うーん可愛い。
家でも職場でも愛しい嫁を見られるとか果報者過ぎるな、ニマニマを抑えつつゆったり待った。
「お待たせしましたぁ」
「ありがとう、お疲れさま」
機械とはいえ嫁が淹れてくれたコーヒー、レンチンとはいえ嫁が温めてくれたスコーン。
にっこにこの嫁を目に焼き付けて最高に贅沢な昼食をいただこう。
さて事務所に上がろうかと離れようとしたところ、背後から「ああー!」と田仲の甲高い声がした。
「ちょっと津久井フロア長、仕事中にカフェを使うなんて」
「…何か問題?制服は脱いでるし正当な休憩時間だよ」
ただのジョークならもっとおどけて返すのだが田仲とはそんな仲ではない。
相手がそう勘違いしているかもしれないが俺は分厚い壁を1・2枚置いているつもりだ。
そして田仲は本気で使用を咎めていたらしい。
管理職である俺が説明したものだから悔しそうに口をへの字に曲げる。
ちなみにカフェコーナーの使用は誰でもして良いのだ。
制服を脱ぎ買い物するのも認められているし店長がここの席を使って本部の人をもてなしたりすることもある。
長々と居座って持ち込んだ弁当を食べるなどは見栄え的にもよろしくないが、店に金を落とす分には普通の利用は禁止されてもいない。
この田仲は社歴が長いからこうしてマイルールを作っては後輩に押し付けているのだろうか。
社内規則に反した教育を後輩にしてなければ良いがと不安になる。
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