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2016…評判の饅頭

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 本人も同じことを思ったのか、

「まだ、続ける。仕事を覚えて、もし最終的にダメでもそれも経験値にしたいの」

とパンの耳を口へ放り込んだ。

「そう、なら俺は美晴を応援するよ。でも心が辛くて家庭生活が立ち行かなくなればすぐに辞めさせるぞ、良いな?」

「うん!あの、落ち度は元々多いけど、ドジしないようにするから!」

「…うん、頑張り屋だな…俺は美晴のそういうところ好きだよ」

「……!」

「なに」

おっとつい心の声が漏れてしまった。

 照れ隠しに自分のゆで卵をコツコツ過分に叩く。

 美晴は最近滅多に聞けない自分へのラブなワードに食いついて、

「好き?」

と瞳を輝かせた。

「うん」

「……えへ…嬉しー」

 つるつるのゆで卵にかぶり付くつるつる肌の美晴、福々としたこの顔を守るために俺は毎日働いている。

 決して他の奴に泣き顔を見せるために働きに出す訳じゃない。

 俺以外の人間が美晴の感情を突き動かすなんてちゃんちゃら可笑しいしはらわたが煮え繰り返る思いがする。


「(可愛い)」

 俺と家族のために生きれば良いんだ。

 でも世間と繋がっていたいと希望するなら叶えてやらねば俺の好きな美晴じゃなくなってしまう。

 俺が引き出せる表情は知れてる、不本意だがまだ見たことのない新しい美晴を見てみたい俺も確かにいる。

 これからより注意深く観察して心身に支障が少しでも出始めたら辞めさせよう。


 美晴のもぐもぐ動く唇を凝視しつつ卵を食べ切れば、彼女はいつしか困り顔になっていた。

「どうした」

「浩史くん、あの、帰ってから…その、」

 やれやれこんな野暮ったい俺にセクシャルな印象を受けるのは美晴しかいないだろう。

 思わせぶりに舌舐めずりをすれば彼女の頬はぽんと赤らむ。

「なに?美晴」

「あ、ここじゃ、言えないよ…」

「なに、小声なら良いだろ…んん?」

「え、あの、ん、あのね、」


 身を乗り出す美晴へ差し出した右耳に吹き込まれたのは「帰ったら、エッチ、したいの」という可愛いお誘いだった。

 俺はいつものように

「…しゃあねぇなぁ」

と余裕たっぷりに笑って伝票を掴んだ。
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