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2010…母親学級バトル
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しおりを挟む消化し切れない俺の心情を珍しく読み取った美晴は俺の頭を抱いて、
「もう謝ってもらったから良いの」
と赤子をあやすみたいにぽんぽん背中を叩いた。
「ふーん…美晴を散々馬鹿にされて、俺は腹立ったけどねぇ」
「私は良いの、馬鹿だし鈍いし」
「馬鹿じゃねぇって…また折檻して欲しいのか」
「え、あ、」
そこまでは期待してなかったのか、後ずさった美晴の顔は困り顔で…顔色までは近眼の俺には分からないが口元はニヤけている。
「嫌がってねぇな、エッチな嫁さんだねぇ」
「ひゃん」
寝室では出来ないのでやはりリビングへ、家が完成したら俺個人のゲーム部屋も作ろうと思っているからそこで出来たりして。
夢は膨らむが今はとりあえず小さなソファーの上だ。
「美晴、乳が出てる」
「あー…もったいない」
ちなみにだが美晴には、よく協議した上でこの度の分娩後に卵管結紮を施してもらった。
ピルは飲み忘れるかもしれないしリングというやつはこの先入れ替え手術が要るという。
もう子供は2人恵まれたし打ち止めにしてしまおうと決めたのだ。
だから心置きなく致し放題…という訳もなく、俺は俺で産前に半分騙して書類に判をつかせ内緒で結紮手術を、つまりはパイプカットを行った。
勢いで決めて手術はすんなり終わり、美晴の床上げまでには精液検査も済ませてゆったり営みを再開することができた。
「浩史くん、あ、ゴム、」
「良いよ、手術したんだから」
「でも、100パーセントじゃないって、あ、あ♡」
「(俺もしたんだから限りなく100パーセントだよ)」
もし出来たってもちろん産ませるし可愛がってやるよ、確率を掻い潜って成せたらそれこそ奇跡の子じゃないか。
俺が何故パイプカットのことを黙っているかといえば美晴が心配するし負い目を感じるだろうからだ。
何故決断したかってそれは美晴だけに痛い思いや身体の改造をさせたくないと思ったからなのだが…そんなことは美晴は知らなくて良いのだ。
「浩史くん…ギュッてして」
「ん」
「幸せだね」
「あぁ」
この頃から俺は、あまり可愛いとか愛してるとかを言葉に出さないようにしようと決めた。
元々が照れて発しない方なのだが、特に自粛しようと思った。
それは美晴を甘やかさないためで彼女の上に立っていたいからで一国一城の主としての自覚を持つためで。
しかし感情のダムが決壊して愛しさが溢れてしまいそうになるからでもあり…俺自身が美晴に溺れてしまいそうになるからだ。
「浩史くん、好き♡」
「うん」
「私のこと、好き?」
「あぁ」
「…うれしい…」
これも美晴は悟っただろうか。
しかし最初が塩対応だったから問いかけに同意するだけでも嬉しいらしかった。
悪いが俺はこれから強い男として生きていきたいんだ。
美晴への想いは心の中だけで吐露して、あってもセックス中だけになるだろう。
冷たくはしない、ただ見境なく甘えたりもしない。
お互い強くなっていかねばならないんだ、子供たちを守るために。
「おやすみ、浩史くん」
「おやすみ」
パジャマを着直して寝室に戻った俺たちは、二手に分かれてベッドへと入った。
つづく
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メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
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