うちの嫁さんは世界一可愛い、異論はあろうが知らねぇよ。

茜琉ぴーたん

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2022…ヒーローと奥さま(最終章)

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 翌朝。

 パジャマを着直して美晴より先に台所へと降りれば、朝食を摂っていた親父が俺を見るなりサッと視線を逸らした。

「おはよ」

「うん…おはよう」

 お袋は洗濯作業をしているらしい。

 親父はそわそわして階段の方を窺っては何か言いたげにこちらをちらちら見ていてうざい。


 他愛のない会話をすることしばらく、しばしの沈黙の後にえらく小声になって、

「浩史、お前……凄ぇんだな」

と半面歪ませて実に下衆な顔になる。

 はてなんのことか。

 頭が完全に起きてない俺は何か凄いことをしたろうかと昨日の出来事を回想し、夜じゅう耳にした美晴の「すごぉい♡」の喘ぎ声が検索にヒットした。


「………な、な何が」

「テクニシャンなの?美晴ちゃん、えらい鳴かせてたじゃねぇの」

「…………あの、いや、親父、酔って早めに寝たんじゃ」

「便所に起きたのよ。したらなんか聞こえるからよ、美晴ちゃん泣いてんのかと思ったら…えらくお前絶賛されてやんの……仲良しになったのは何よりだけどよ、どうにもこう…聞いちゃ悪いしよ、その…なぁ、ホテルとかでしろよ」

「…悪い…」

 至極真っ当なご意見である。

 1階のトイレは階段の隣にあるから親父はそこへ行った際に俺たちの営みの音を聞いて…というかこちらが勝手に聞かせてしまったのか。

 確かに美晴の声は大きかったがそこまでか。

 恥ずかしさと聞かせたことによる嫉妬で己の危機管理能力の低さを思い知る。

 もしかして近所にも漏れたんじゃないか。

 良くしてもらっているのに「エロい娘だ」なんて噂されたらどうしよう、せっかく馴染んだのに美晴の居場所を奪ってしまう。


「いや、お前らが幸せなら良いんだよ、責任持って交際するならさ」

「も、もちろん…大切にする」

「けどなぁ…あれ聞かされるとさ、俺もおっ勃っちまってさ。昨日は母ちゃんと久々に手合わせ」

「き、聞きたかねぇよ……お、お袋にも聞かれてんのか、だから席外してんのか?」

「いいや?母ちゃんは寝てたのを俺が起こしたのよ。んで今は自分が汚したシーツ洗ってるだけ。もうビッシャビシャよ、セーリ上がってるから父ちゃん頑張っちゃってガッツリ中でいっちまったわ。いやぁ、母ちゃんも若い時よりエロ」

「もう良い、…ッ…すまん、無配慮だった。今後気をつけるから…」


 あぁ情けない、やっぱりホテルに行けば良かったんだ。

 お袋の小言を恐れずきちんと交際宣言をして、順を踏めばこんなことにはならなかったんだ。

 がっくり項垂うなだれていると美晴が階段を降りて来る。
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