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2006…家無し少女

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「浩史、美晴ちゃん、しばらくうちに住まわせるわ」

持て余して歯磨きをしようと洗面台の前に立てば、朝食を終えたお袋がそんなことを言い出す。

「え」

「さっきの泣いてたのね、生理だったのよ」

「せいり…」

分かるようで分からない。

 しかしベッド周りが汚れたのはそういう訳なのかと合点がいく。

 なるほど女にしか言えないか、しかも汚したとあっては申し訳なさもあり恥ずかしくもあり…声をひそめるお袋はまるでスパイみたいに台所の方角を気にしながら説明を重ねる。

「寝てる間に始まっちゃったのね、準備してなかったから大汚れ…まぁ10代ならあることよ。周期が安定するまで時間のかかる子もいるし……だから妊娠はしてなかったってことね、その点は良かったんだろうけど」

「はぁ」

「元カレに職場も知られてるから対処した方が良いと思うんだけど…もし妊娠が勘違いだって分かったら連れ戻されるかもしれないじゃない?僅かにだけど暴力も受けてたみたいなのよ、小突いたり強く腕を掴んだりね」

「そう…」

 確かにあの男は彼女の腕を引っ張って歩かせていた。

 あんなのでも彼女が惚れているのだから少しは良いところがあるのだろうと思っていたが…そうでもなさそうだ。

 ダメ男なりに、というかダメ男だから執着していたのかな、ほわほわした港さんは逆らいもせず言いなりだったようだし。

「本人も別れるタイミングを計ってたみたいだし、逃げないようにずっと貼り付かれて職場に送り迎えまでされてたんですって…なんて言うのかしらね、弱者というか…自分の稚拙ちせつさを補うためにおっとりした美晴ちゃんは良いように使われてたのね」

「なら無事独り身になったと」

「それで良いでしょ…何でかしらね、私、モタモタしてる子って苦手なんだけど…助けたくなっちゃうわ、美晴ちゃんって」

「ほー…」

何となく同感だ。

 俺は否定も肯定も伝えずに眼鏡を外した。





「じゃあ、行ってきます」

「はい、行ってらっしゃい」

 今日は港さんはうちで留守番をするらしい。

 俺を見送る時にはさっぱりした様子だったしきちんと化粧もしていた。

 汚れたシーツとパッドはベランダで風にたなびいて、しかし「雨に遭うかもしれないからしっかり見ておいてね」とお袋に言われているようだ。

 散歩くらいしても良いが体調次第、ただ今の仕事は辞めた方が良いとアドバイスも貰ったらしい。


「(若妻だな…)」

可愛い女性が見送ってくれるなんて悪い気はしないさ、俺は意気揚々と出勤した。
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