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2006…家無し少女

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「浩史、浩史」

「居るよ、隣」

有希子ゆきこの服、適当に上下取ってくれる?」

「おう、これどうぞ」

有希子とは嫁いだ姉のことだ。

 用意していた着替えを間口へ差し出せば、お袋の手だけ伸びてきて引ったくるように掴んでまた扉が閉まる。


 結局男では役に立たないのか。

 顔でも洗うかと階段を降りかけたらお袋から

「浩史、風呂場使うから出ておいてね」

と先手を打たれた。

「へい…」

 仕方なくゲーム部屋へと戻り2人が廊下を通過するのを待ち、宣言通り風呂の扉の音がしてきたのでやれやれと寝室を覗いてみる。


「…お?」

昨日の朝まで俺が寝ていたベッドはシーツとパッドが外されてマットレスが剥き出しになっていて、もしかして彼女が漏らしたのかと若干引いてしまった。

 だから汚してしまい怒られると怯えていたのか、にしても彼女の幼稚さを疑う。

 頭は賢いにしても何か抜けているのか。


 失礼だがそんなことを考えて台所へ向かうと親父がコンロの前に立っていた。

「おはよ」

「おう、おはよう…美晴ちゃん、元気なのか?」

「…分からん。朝風呂してるよ」

「そうか。こら母さんが調理代われって言うからしてんだけどよ、時間かかるなら早めに食べようぜ」

「うん」


 そこから俺と親父はあるもので手早く食事を済ませて、お袋と港さんの分の皿を食卓へ残して出勤準備にかかった。

 本日の俺のシフトは遅番、まだしばらく時間があるので居間でダラダラしていると、汗だくになったお袋と姉の服を着た港さんが連れ立って風呂場から出て来た。

「あ、おはよう…」

「おはよう、ございます…すみません、取り乱しちゃって」

「いや、良いよ…」

漏らしたのならパニックになるのも仕方あるまい。

 ただ部屋が今後臭ったりカビが生えたりするのは困るなと顔が引きつる。

 しかし助けようったってお袋がいなきゃ無理だった、それを見越して連れて来た訳だが俺はあまりに力不足だった。


 お互いはにかんで言葉を失っていると、お袋は席に着き手を合わせ

「まぁ、食べましょう、美晴ちゃん」

と疲れた様子でしかし笑って港さんを呼び寄せる。

 混み入った話でもしたのか、心の距離が縮まったのなら良いことだ。

 俺は居間のソファーへ掛け直してテレビのニュースをぼうっと見つめた。
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