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2019…茶色い弁当
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しおりを挟む翌日。
休憩タイムに弁当箱を開けると、ちょっぴりの白飯に昨夜のコロッケが5つ、どーんと詰められていた。
「(……上手く詰めたもんだな)」
何事も褒めてやらねば人は育たないものだ。
「せめてケチャップとかソースを付けて欲しい」は次回言うことにする。
責めたところで「浩史くん、コロッケ好きだから…」と瞳を潤ませるに決まっている。
嫁の悲しむ顔は見たくないしコロッケは美味しいしで我慢できた。
「お疲れさまでーす。津久井フロア長もお昼ですか…わぁ」
休憩室の管理職デスクに着いた5歳下の店長・宮前は俺の弁当をチラと見て素直な感想を漏らす。
俺は書籍・音楽・ゲーム・映像等を統括するエンタメコーナーのフロア長、宮前は新卒で入った頃から面識があり、数回の転勤を経て関西から凱旋して来ると俺よりも出世していたというやり手の若手だ。
「宮前くん、言いたいことは分かるけど言わないでよ」
「あは…コロッケ好きなんですか?」
「うん…嫁さんが大量買いしてね…おかげでしばらくコロッケ生活よ」
「何か交換しましょうか?おかず」
宮前が自身の弁当箱を差し出そうとするも、俺は箸を振って「要らんよ」と返した。
気を遣った訳ではない。
これは俺なりの誠意というか独占欲というか、せっかく嫁が頑張って揚げたコロッケを他の男の口に入れたくないという想いからだった。
「じゃあ僕の置き調味料、お貸ししますよ」
「あ、ほんと?助かる…ソースある?」
「どうぞどうぞ」
ソースは遠慮なく貸してもらい、2個分掛けてうまうまと味わう。
ちなみにだが美晴も同じ店舗のカフェコーナーにパートとして勤めており、15時には帰宅して「5個じゃ少なかったかな…」と見当違いに心配していたそうだ。
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