僕たちが幸せを知るのに

茜琉ぴーたん

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epilogo…Felicità

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「……」

「Leoに何か不満でもおあり?女性関係は派手だったみたいだけど、貴女に対しては礼を尽くしてたと思うわ。それとも私たちに何か思うことがあるかしら」

「違います、あの、ご、ごめんなさい!」

パン屑の付いた手を膝へ置き、朱鷺子は深々頭を下げ…ごちんとテーブルで強打した音が静まり返ったダイニングに響く。

 それから一拍して『ピーッ』と追加のピザの焼けた音が鳴り…ティツィアーノはいそいそ移動してオーブンのフタだけ開けて戻って来た。


「…Ms.ミストキコ、何がごめんナノ?」

「あの、私、ご覧の通り歳で、そうでなくても子供を作れない体で…お父様お母様に、その…孫とか、見せてあげられないんです。二人ではそれで納得しましたけど、やっぱり申し訳なくて、あの、」

「二人で納得してるんデショ?何が問題ナノ」

「だって、ご両親と変わらないこんなのが息子さんを…」

「Leo、彼女のネンレイは問題ナノ?」

 項垂うなだれる朱鷺子をよそに父が礼央に問えば、

「NO!だよ、彼女、marriage blueマリッジブルーなんだよ、可愛いでしょ」

とあっけらかんと返す。


「レオくん、」

「何歳でも関係無いんだけどね、世間体とか気にしちゃうみたい。変でしょ、僕の裸の像ばっかり作ってるくせに、こういうところはガチガチなんだ」

「わ、私は本気で」

「朱鷺子さん、反対されたら諦めちゃうの?」

「あ、きらめないけど、けど、手放しで喜んで下さるとは限らないじゃない、本心ではどう思われてるか…」

 ティツィアーノは空いた大皿を持ってキッチンへ立ち、新たに焼けたものをそれに載せてテーブルの中心へと置き直した。

「Ms.トキコ、ウチはアナタの歳とか気にしないヨ。マゴも気にしない…息子が選んだ相手と幸せに過ごせるナラ、何でも良いんダヨ」

「……」

「Leoはアナタと居て幸せそうダヨ、アナタは違うノ?」

「いえ……幸せ、です」

「ソウ、なら良いじゃナイ。ホラ、次はbambinoバンビーノネ!」


 ホワイトソースの上にコーンとツナをあしらった『坊や』向けのピザにカッターを走らせて、ティツィアーノはふふと笑う。

 そして

「Ms.いいこと、よく聞いてネ。Leoも…コホン、」

と咳払いし、

「Mai si è troppo giovani o troppo vecchi per la conoscenza della felicità.」

とつらつら喋った。


「…?」

「コレ、Italiaイタリアのコトワザね。意味は『幸せを知るノニ、人は若すぎることもなけレバ、老いすぎていることもナイ』、幸福に年齢は関係無いってことネ」

「…はぁ」

「Ms.トキコもLeoも、幸せになるノニ歳は気にしなくて良いんだヨ。誰が責めるってんダ?ウルサイ奴がいたら呼びなサイ、ブッ飛ばしてやるカラ!」

 隣でコンシャも「うんうん」とうなずいてピザに手を伸ばす。

 そして安定の美味しさに

「あなた、今日も最高に美味しいわ」

と夫の頬にキスをした。

「わぁ」

「マァ、人生は長いようデ短いからネ、愛に限らズやりたいコトはやっとくべきダト思うヨ。Leoが巣立つんダ、俺はあとはwifeワイフのために生きるヨ」

「papa、見せつけないでよ」

「フフ」
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