僕たちが幸せを知るのに

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
54 / 73
Capitolo11…Vecchiaia

54

しおりを挟む

「これまでありがとうね、よく頑張ってくれたわ」

「…?まだこれからじゃないですか、なんですか?呑んでるからって変な…サヨナラみたいなこと言わないで下さい」

「…レオくん…あなたはまだ若いわ。仕事も出来るし気も利くし商才もある。この前お会いした画廊のオーナーの方覚えてる?あのハゲたアゴひげの人。今度規模を拡張するんだけどあなたにそこの管理を任せたいって言って下さったのよ、受けてみない?」

 確かにそれは憶えている。

 先生の作品を高値で取引して下さるお得意様でもあるし僕単体でも何度か出向いて話をさせてもらっている。

 世間話程度に「わしの所へ来ないか」なんて口説かれもしたけど社交辞令と思い適当にかわした。

 帰り際に尻を触られて気色悪かったから特に憶えていた。

「あの、ありがたい話ですけど、その…あの人…」

「男色家で有名ね」

「ですよね、いや、それを分かってて言ってるんですか」

「さすがに断ったわ、あの人手腕は見事だけど…以前個人的に原型が欲しいって言うから譲ったじゃない?あれ、ベッドに置いてるらしいわよ」

「……は?あれって…」

「3作目の顔とお尻」


 原型は先生の思い入れがあるものは保管しているがそれ以外は雑多に倉庫に転がしている。

 作品の一部として買ってもらうこともあるし箱ごと運んだのも僕だからおぼろげながら把握はしている。

 しかし学生時代に制作した3作目は裸で開脚座りのポーズだった。

 ただただ卑猥ひわいなあのパーツと寝所を共にして何をしようと…いや、分かるけど認めたくはない。

「……え、僕で致してるんですか?」

「用途は分かんないわよ、でも添い寝してるって言ってらしたわよ。あと『改造しても構いませんか』って聞かれたの、『差し上げたものだからご自由に』って返したけど」

「え、完全に犯されてるじゃん、やばぁ…もうまともに顔見れない」

 しかし硬い粘土製のアナルで僕を奪ったつもりになれるなんて想像力の匠だな。

 顔なんかぶちゅぶちゅキスされてるのかななんて考えると今後の付き合いにもバッチリ影響が出そうだ。

 お姉さまからの人気は分かってたことだけどお兄さまからも好かれてたなんて知らなかった。

 これきりで契約を切ろうとは思わないけれど何となく疎遠にしていった方が安全なのかもしれない。

「まぁそこは割り切ってよ。…でも大切なレオくんが不本意に新しい道を開拓されちゃうのは避けなきゃね…」

「絶対御免です、僕はそっちの趣味はありませんので」


 デッサンも撮影もする様子が無いので一旦体を起こせば、先生は少しだけ笑んで

「でもね、あの人以外にも『うちでどうか』って言って下さる方、いるのよ?あなたさえ望むなら、もっと広い世界に出てみるのも良いかもよ」

と膝を台に頬杖をついて小首を傾げた。

「…先生から離れるってことですか?…嫌ですよ、僕は先生だからこれまで頑張って来たんです、知らないことも勉強したし仕事だって楽しくなってきて…先生と一緒じゃなきゃ、ここまで出来てない」

 勢いよく立ち上がれば剥き身の股間がぶらんと揺れる。

 先生の目線はそれと同じにつられて、僕の目へと戻って来る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

処理中です...