僕たちが幸せを知るのに

Capitolo8…Leo

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　館長さんがホールの方から１点ずつ作品を紹介していって、テーマとか工夫した部分だとかちょっとした説明を作家にさせる。

　色彩鮮やかな焼き物、青一色の油絵、細工の絢爛けんらんなアンティークドールハウスなど派手なものから素朴な水墨画まで幅広かった。

　僕は自分の住む街にこんなすごい芸術家さんが居たなんて知らなかったし、もっと大々的に広めて誇るべきだとも思った。


　壁伝いに紹介をしてホールの中央の工芸を見て、ギャラリーも少しずつ動きながら館長は中庭へと出て来る。

　金属でできたオブジェ、植え込みに紛れて置かれたガラスの花、パチパチと拍手が鳴っては止んで…ついに中央の一際大きいシラトリさんの作品横へ館長が着く。


　マイクを渡されるとシラトリさんは澄まして

「こんにちは、シラトリと申します。長年創作活動は趣味で行って参りましたが、こうしてきちんと発表するのは初めてです。言わば処女作品ですね、どうぞ、ご覧下さい」

と僕的には下ネタだろうワードを織り込んで館長へゴーサインを出した。


「それでは作品名・『レオ』です、どうぞー」

　勢いよく剥がされる赤いベール、

「わぁっ」

「おぉー…」

大トリに相応ふさわしいのかと物見に集まった衆目はにわかに騒つく。


「………やりやがった」

　中から現れたのは明らかに見覚えのある裸体だった。

　色彩こそダビデ像みたいな白い石の色をしているけど僕の目にはもう少し血色も感じられた。

　小さな乳首、小範囲の陰毛、そこに隠れた陰茎と陰嚢いんのうは大きさも僕のそれと全く同じ…そして顔はまんま僕の顔だ。

　隣の客は拍手を終えて「ん？」と青くなった僕を二度見する。

「（本当にみんなの前でチンコ披露しやがった…服は着せるって言ってたろ、あんのババ…いや、シラトリさん…）」

　館長の隣で挨拶をするシラトリさんはとても嬉しそうで、なんでもここまで大きな石膏せっこう像は自身でも初めての制作だったらしい。


　皆が等身大・ラッセル礼央れおを眺めては口々に感想を言い合う。

　休みだからと連れて来られた館長の孫娘さんはソコを指差して「ちんちん付いてるー」と叫び周囲の笑いを誘っていた。