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Capitolo4…Riunione

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 さて学校に着いて無事入構できたらクマさんと別れ、計画していた地点へと移動する。

 職員の集まる事務棟とコンビニの入る食堂とを繋ぐ道に面した建物の脇、すぐに駆け寄れるよう屋外に待機することにした。

 まるでアーミーだ、金髪が目立たないようにハンカチを頭巾にして渡り廊下の下の植え込みに紛れる。

 彼女が現れる可能性が一番高いのはこのルート、弁当を持参していたら骨折り損になるが…事務棟の玄関口も見えるし何かしら外に出れば捕まえられそうだ。



「あっつ…」

残暑は僕の暑さに弱い体を容赦なく虐める。

 1時間も過ぎれば僕は持ち込んだお茶を全て飲み切ってしまいカラカラに渇いてミイラ化していた。

 あぁまた熱中症になりかけてる、でももう通るかもしれないし待避中に動かれるともう見つけるチャンスが無い。

 職員駐車場で見張るという手もあるけど守衛が立ってて簡単に出入りできないらしいし、夏休みが終わると人通りが増えて余計に見つけ辛くなってしまう。


 やばいなぁ、でも会いたいなぁ…ここに潜んで3時間が経過してねっとりと嫌な汗がひたいから頬へと流れ落ちた時、いよいよ諦めようかと立ち上がれば足がもつれてしまい地面へ尻餅をついた。

「いてぇ…」

尻には砂利や小枝の感触、幸い砂が乾燥しているからべったりくっ付いてはないだろうが我が身の置かれている状況が情けなくって涙が出そうになる。

 そしてやはり暑さでやられているのだろう身を起こそうにも力が入らない。

 僕は炎天下の植え込みの前で体育座りをしてそれでも目線を事務棟から離さなかった。


「(暑いな…溶ける……ぁ、あ、)」

レンガだろうか石畳からはゆらゆら陽炎かげろうが立ち昇って事務棟が揺れる。

 じぃっと眺めていた出入り口にぼんやり美しいシルエットが現れて目を見張った。

 9月の蜃気楼しんきろうだったりして、僕の記憶の中でのシラトリさんよりもう少しカジュアルなジーンズのその姿…彼女なのかな、もう誰だって良いから水分をくれ。

 助けて欲しい、けれど喉が詰まって声が上げられない。

「(…気付いて!)」

植え込みの仕切りに膝をついて這うように石畳へと出る、ところがさながらゾンビの僕はそこでパタリと力尽きた。
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