僕たちが幸せを知るのに

茜琉ぴーたん

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Capitolo1…Cigno

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「涼しい…」

 充実したメニューと低価格が学生には嬉しいのだろう、見学の高校生だけでなく係員の在学生たちも多く昼食を摂っている。

 僕は券売機で適当に日替わり定食を買って、『定食・おかず』と書かれたプラカードの下がるカウンターへと向かった。


「いらっしゃい…まぁ、日本語オッケー?」

「大丈夫ですよ、これお願いします」

「はい、日替わりねー…はい、熱いから気をつけてね」

調理員のお姉さまは前もって温めてあるホイル包みを野菜の盛られた皿に載せて、味噌汁と一緒に台の上に置く。

 おそらく券売機から信号が出て注文を把握しているのだろう、白米を盛った茶碗も置かれてトントンと定食が揃ってしまった。

「あの、すみません。たくさん学生が居るから分からないとは思いますけど、大きくてクマみたいな、とっても男前の4年生の男子って知りませんか?」

 期待はしないけど一応聞いておこうかな。

 配膳してくれたマスクに三角巾・割烹着かっぽうぎのお姉さまに尋ねると

「とっても男前かどうかは分からないけど…情報ビジネスの今泉いまいずみくんじゃない?」

とあっさり尋ね人が見つかる。

「え、知ってるんですか?」

「うん。今日も手伝いかな、さっき通って行くの見たわよ。大きいから遠目にも分かるわよね」

「昔の映画starスターみたいな顔の」

「あぁ、うん、昭和の男前って感じ」

「美人の彼女がいるらしくて」

「うんうん、君みたいな外国人の。よく笑うキレイな子、一緒にここで食べてるの見たわ」

 これは当たりだ、情報通なお姉さまは換気扇と鍋の音に紛れつつも伝えてくれた。

luckyラッキー…来てるんだ。それ僕の姉なんです。イマイズミくん、有名なんですか?」

「私たちも馴染みの学生の顔は覚えちゃう方なんだけどさ、彼はなんか目立つのよね、あと親切で丁寧だし感じが良いから覚えちゃうのよ。ほら、冷めちゃうから早くお食べなさい」

「…Thank youサンキューhoneyハニー

「あらやだ」

お姉さまはマスクの下の目元を紅くして、ひらひら手を振る。


「良いladyレディーも居るじゃんか♡」

 僕がお姉さまと称するのは大概40代以降の女性で、中でも好みなのは品が良くて慎み深そうなレディーだ。

 気さくなタイプも可愛いけれど、まだ『女』を忘れてない淑女が僕の腕の中でほろほろ崩れていくのが堪らなく興奮する。


「…美味しいな」

開けたホイル包みの中はハンバーグだった。

 牛の配合率が高くてジューシーで旨味が凄い、父のレストランで出てくるものにも負けず劣らずの味で感心した。

 学食は美味いしお姉さま方は可愛らしいし言うこと無しだね、ゆっくり味わって食器を返す時も他のお姉さまとお話をして、また暑い屋外へと足を踏み出す。
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