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epilogo…Felicità

73(最終話)

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 その後、ワインを一杯だけ呑んだ朱鷺子はベロンベロンに酔ってしまい、帰りの車内では吐き気と闘うことになる。

「もう…朱鷺子さん、吐かないでね」

「おエっ…」

「調子に乗るからだよ…もう少しだから頑張ってね」

「ゔ…」

 走馬灯のように今日一日のことが思い出されては記憶の果てに消えて行く。

 朝から緊張でまともに食べていなかったから彼女は余計に酔いが回ったのかもしれない。


「朱鷺子さん、あの乾杯は無いよ…papaが照れてた」

「ごめん…」

 ワインを開けた際に香りで既に高揚していた朱鷺子は、乾杯の発声で盛大に「チンチーン!」と叫んで夫妻を引かせていたのだ。

 ティツィアーノは赤くなるしコンシャは「⁉︎」だし、礼央は「あちゃー」と頭を抱えるしで妙な空気になっていた。


「…朱鷺子さん、papaの言う通り、僕はあなたと幸せに過ごしていきたいよ」

「……うん」

「世の中のことわりなんて一生かけても把握し切れないんだから、50そこそこで悟れるワケ無いんだよ。幾つになったって皆若輩だよ…助け合って行こうよ、ね」

「…うん、」

 ぱたぱた手で扇ぎ顔の火照りを冷ます朱鷺子は運転席の頼もしいパートナーへ目線を向けて、また戻しアルコール混じりのため息を吐く。

「(…マリッジブルーって…言った…結婚、してくれるんだ…)」

 同棲の挨拶はいつしか結婚の挨拶になっていた。

 事実婚や内縁という線もあるが日本育ちの礼央なら婚姻届を提出する法的な夫婦という形を取ってくれそうだ。

 一度は破綻はたんした夫婦生活、さてどこまで頑張れるかしら…そんなことをふわふわ考えていると自宅マンションへと到着していた。


「朱鷺子さん、起き上がれる?」

「ん、だいじょーぶ…」

「吐く?」

「いいえ、平気よ…おさまったわ」

「そう、良かった。最中に吐かれると困るから」

礼央は助手席のドアを開けて腕を貸し、いつもよりクールに微笑んで見せる。


「え…」

「婚約初夜。高揚してるから激しくスるよ、突き上げて同時に吐かれちゃ困るなぁ」

「は…」

「新婚らしく裸apronエプロンとかどう?台所なら立ちbackバックだよね、あはは」


 ぽかんとなりつつ立ち上がった朱鷺子は彼の亭主たる面持おももちにクラリと当てられ…

「やっぱり若いって良いわねぇ」

と悔しそうに呟いた。



おしまい
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