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Capitolo10…Insegnante
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しおりを挟む「うん…お姉さまを見ても、前みたいにドキドキしなくなっちゃった。受験前くらいから…性欲自体があんまり、うん…枯れたのかも」
「じゃあ私にも?」
「…シラトリさんは相変わらずキレイだし…恋愛対象だよ、でもそれ言うと避けられちゃうでしょ、僕は報われない恋に徒労するの嫌なんだ」
「まだ若いのに」
「その若い僕を弄んだでしょ、4年も何もさせてくれなかった」
枯れたのも本当だ。
勃たない訳じゃないけどナンパに出たり時間と労力を費やすのが億劫になった。
でもたまにシラトリさんに呼ばれてモデルをして、裸を見せたりスーツで隣に並んだりするのが楽しくて満ち足りてたから『恋愛』というものをしばし忘れたんだ。
下心を出そうと思えばいつでも出せたさ。
でも割り切った大人な関係も居心地が良かったから背伸びして澄ましてたんだ。
いつお払い箱になっても「そう、じゃあサヨナラ」と去れるように、シラトリさんのあの冷たい眼差しは二度と向けられたくなかったし。
「たった4年じゃない」
「あのね、22歳の僕の4年と47歳のシラトリさんの4年を同列に語らないでよ…こうやってまだ気を持たせようとするんだ、本当悪い女」
「ごめんごめん、ふふ…春から…仕事のパートナーとしてきちんとやっていける?」
「やるよ、そこはちゃんとする。僕、なんだかんだシラトリさんの作品好きだから…上手くやっていきたいよ。僕がシラトリさんの名刺になる、僕のビジュアルが役に立つなら協力する」
あわよくば、なんてもう考えない。
この人を上司として作家として尊敬し仕えていくんだ。
渇いたため息を吐けば彼女は納得したように笑って、種々の書類の入った紙袋をどすんと足元へ置く。
「うん、よろしくね。…さて…これ、会社の資料と契約先のリストよ。把握しておいてね、税理士さんとの打ち合わせが最初の仕事になるかしら…また連絡するわ」
「はいはい…」
「それから、」
「はい?」
紙袋の紐を揃えて掴み、春休みを謳歌どころかしばらくはインドア生活だなぁなんてげんなりしている僕の顔にサッと影がかかる。
不思議に思い顔を上げたら柔らかい手に顎を引き寄せられ…
「卒業おめでとう、レオくん」
と気品のある口紅の香りとぷるぷるの感触が頬辺りにちょんと触れた。
口紅どころか化粧品全体の香りが同級生のそれとは違う。
上質な香水が含まれているような懐かしさを感じるような、落ち着きと興奮が同時に差し迫る思いがした。
「な、な…」
「挨拶よ、あなたならこれくらいするでしょう?」
「しないよ、知ってるじゃん、日本式しか、ちょっと、どういうつもり」
期待させて結局手は出させないくせにこうして僕を縛るんだ。
だくだくと全身の血が巡ってぽっぽと首から頬から熱くなる。
「だから挨拶、それにお祝いよ。じゃ、降りましょ」
しゃっきりしたシラトリさんは荷物を持って先に廊下へと出た。
「……うわ」
きっと今僕は白い肌が真っ赤に染まっていることだろう。
「…なんだよ、なんだよっ…なんですんなり諦めさせてくれない…もー、悪い大人だな!」
慌てて駆け出て、エレベーターを待つ彼女の荷物を奪い取ってやった。
「あら」
「…重たいものは僕が持つから…先生」
「……ありがとう、ラッセルくん」
絶対に僕から手を出してなんかやるもんか、彼女の方から懇願するまでキスだってしてやるもんか。
やろうと思えばいつだってできるんだ、でもここまでおちょくられて施しで与えられたって喜べるもんか。
この感情を敬意に替えて誠心誠意勤め上げてやる。
そして後悔するがいいさ、「あの時抱かれてれば良かったわ」ってね。
「…ふふ」
「どうしたの?」
「いいえ?僕、頑張りますから」
「そう、よろしくね」
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