僕たちが幸せを知るのに

茜琉ぴーたん

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Capitolo5…Miniere

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「…レオくんいいこと?熟女に限らずね、女が皆あなたみたいな若くてイケメンが好きって訳じゃないの。あなたは寂しい気持ちの熟女をサーチするのが得意みたいだけど、あなたはその気持ちにつけ込んでるだけ、愛されてるなんて思わないことね」

「そんなこと…分かってるよ。ただの暇つぶしだよ」

「ふん…あと、セックスが嫌いな女だっているのよ、覚えときなさい」

「…じゃあなんでここに僕をまた連れ込んだのさ」

「は?介抱するためじゃない。保健室でこんな話できないでしょ」

「…そう」

まぁ行き倒れをそのまま放置しておけないもんね、僕は彼女がそこまで悪人でなかったことに感謝する。

 まだ頭はクラクラしていて目も渇き椅子にくったりもたれて立てそうにない。

 「早く帰って」と畳みかけられたら這って帰らねばならないのが辛い。


 物悲しさを読み取ってくれたのかシラトリさんは深いため息をゆっくり吐いて、

「あと…もう1回モデルしてもらおうかとも思ったのよ」

とこの間のスケッチブックを棚から取り出す。

「はぁ」

「このソファー、寝て良いわよ」

 前は気付かなかったが、壁際の絵の具で汚れたビニールシートで覆われた大きな山はめくれば2人掛けのソファーで、古びてはいるがシートのおかげで埃などは積もってはいないようだった。


 彼女がシートを取り払えば「横になれる」という誘惑に釣られてぽかぽかの脳が運動神経を操作し、僕は吸い込まれるように奥のソファーへところり寝転ぶ。

 木っ端や油絵具の匂いはするけど嫌ではない。

 頭が横になると心身が落ち着いて呼吸も楽になった。

「はー……らく…」

「で、どうする?また脱ぐ?」

「…僕に得はあるのかな」

「私をその気にさせたら、ワンチャンあるかもよ?まぁあなたは下品なババアは嫌いなんだっけ」

 思いまぶたを持ち上げて彼女を見上げれば細く整えた眉毛が意地悪そうに傾く。

 けれどどうしてか美人だからか魅惑的で美味そうでいけない。

 しかしこちらも交渉する知恵くらい付けてきた、

「…あのさ、あんた教員じゃないんだよね。せめて何か身分証明とか見せてくれない?チンコ見せ損とかマジ勘弁だよ」

とパンチを放てば

「あー、そうね…名刺でいい?……ハイ、どうぞ」

とシラトリさんはあっさり身分を明かしてくれた。


「…………鴨居かもい朱鷺子ときこ………甕倉カメクラ産業大学…外部理事、理事⁉︎」

 顔写真も入ってない名刺だからこれが本当かは分からない。

 けれど彼女の革の名刺入れには同じものがたくさん入っていたから本職の詐欺師でない限り本物なのだろう。

 しかし理事とは驚いた、事務棟に顔パスで入れる訳だ…諸所の合点がいった。

「そう、外部理事のひとりよ。創立者の一族というか…元々が卒業生で、最初は事務してたの。施設とか設備デザイン関係の事務所を立ち上げて出て行った感じ…街の看板とか広告作ったり、保全事業なんかも。だからデザインモデリング学科はこっそりチェックしてるの。大学には用がある日しか来ないわね。常駐しない理事だから個室は無いのよ、この部屋は物置きを特別に使わせてもらってる趣味部屋ね。事務職やってた頃のコネというか…だから受付は顔パスよ」

「…はぁ…ハクチョウじゃなくてカモだったんだ」

「そう、名前、鳥ばっかでしょ?シラトリはインディーズの作家ネームみたいなもんよ、貴方みたいな面倒ごとに遭った時には咄嗟にそっちを名乗っちゃうの」

「ひっど」

「大人は汚いのよぉ、ふふっ…あなたも身元は名前しか言わないじゃない」

「別に言ったって良いよ、Russellラッセル礼央れおカメショー甕倉商業の3年だよ」

あの日も今日も制服を見れば分かるだろう、僕は暑さもあってワイシャツをさくさく脱いでピンクの乳首を早々と晒す。
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