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「阿久津…すぐあった…お?なんか、印象違うな」

「…でしょ?大人しい陰キャなんだ」

 ブルーバックの春翔はあどけない笑顔で、今より当然若いのだが気持ち老けているように感じた。

 野暮ったいというかモサいというか、前髪で顔を隠して…確かに暗そうな雰囲気をしている。

「そうなん?」

「思春期だったし内気で…アニメとか漫画とか好きでね、ダサいとか言われて」

「俺も漫画好きだけどな」

「結局、見た目なんじゃない?標的がいれば理由は何でも良いのかもね。俺、高校デビューなんだよ、ちゃんと散髪してスキンケアするようにしたら、急にイケメン扱いされるようになった」

「自分で言うなよ…まぁ、春翔は美人だよ、イケメン」

俺はアルバムを手に壁際の春翔の元へ戻り、頭を支えて口付けた。

 別に意趣返しでもない、単純に励ましのキスをしたかっただけだ。

「うわ、精子の味がする」

「すまん…んで、今日のあの女子も当時は馬鹿にしてた訳か」

「そう、それがこの夏休みにそこの駅で偶然会ってさ、冗談ぽく『付き合おうよ』って言われて。バッサリ斬ったんだけどね、昔は随分と馬鹿にされたしさ。そこまで酷い目には遭ってないけど、気分悪いじゃん…俺は、中身は変わってないんだよ、見た目がちょっと変わっただけ。背も伸びたしね」

「じゃあ、今もアニメ好き?」

「好きだよ、広く浅くだけど。今考えたら、責められるようなことは一切してないのにね、大人しいと舐められるよね」

 安心したのか、春翔は「ひひっ」と笑う。

 イケメンで性格も良くて、悩みなんて知らずに生きて来たのだとほんのり思っていた。

 けれどそれなりに不遇な時代もあったのだ。

 キザに見えるが人を雑に扱わないのは、自分が昔そういったことをされたからなのかもしれない。

「…辛かった?中学の時」

「そうでもないよ。男子は庇ってくれたし、意地悪な女子も一部だし。大人しいっていうか、真面目に授業受けて、はしゃいでないってだけで。でも、ストレスはストレスだったね」

「ふーん…」


 俺は顔写真の中に、今日絡んで来た女子を見つけた。

 当時から派手なギャルだったのだろう、素朴な周りの雰囲気から浮いている。

 春翔は利用駅が同じだからどうしても今後も会ってしまうだろう、あと半年とはいえ可哀想だ。
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