二人の密会は、ゴシップの証明

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「きゃっ⁉︎」

掲げた腕を掴まれて、女は叫んだ。

「お前、さっきからうるせぇな…芝塚、コレお前の知り合い？」

掴んだのは俺たちの同級生の羽根田はねだで、こいつは180センチ100キロの巨躯を持つ漢である。

　もう引退したが元・柔道部員で、顔はいかついが気の良い奴だ。

　同じ便に乗り合わせていたのか、確かに駅で姿を見たような気もするが普通の風景過ぎて気に留めていなかった。

　そして周りを囲むのは取り巻きの柔道部員か、大柄な男どもが並ぶと迫力があるものだ。

　誰も彼も女へ厳しい目を向けており、リンチでも始まるかのようなピリついた空気が流れる。


「…いや、阿久津のストーカー的な奴なのかな」

「何だそれ。話は聞こえてたぞ。お前、俺らの学校のこと馬鹿にしてくれたな？阿久津の噂もそういう訳か。事実はどうであれ、本人の意図しないことを吹聴するのは良くないぞ。多様性にも配慮が足りん。他の客に迷惑だ、次で降りろ、説教だ」

　電車はグッドタイミングで駅へと着く。

「来い！」

「何すんだよ、テメェ！」

　羽根田は女の腕を掴んだままずるずると引っ張って降ろし、早速ホームで怒鳴り上げていた。


「…春翔、更生するかな、あの女子」

「どうだろ」

「警察呼ばれそうじゃね？」

「羽根田くんの就職に響かなきゃ良いけど」

　羽根田は警察官を目指しており、卒業後は試験を受けるのだそうだ。

　いかつい見た目に反して正義感と道徳観念も強め、あの女子はクタクタになるまで叱られるに違いない。

「…そだな…母校の悪口言われたようなもんだから、アイツら怒ってそうだな」

「神、まさかと思うけど暴行とか…大丈夫かな？」

「んー…正義に反したことはしない…と思う」

　女１人に男が数人がかりで…なんてことが起こる可能性はある。

　しかし卒業を前に羽根田も無茶はしないだろう。


　電車はゴトゴトと駅を離れ、春翔の降車駅へと到着する。

　羽根田から何か連絡があるかとスマートフォンを気にしていたが、春翔の家に着くまで音沙汰無かった。

　きっと円満に解決しているだろう、俺はこれからの春翔とのラブタイムに意識を集中させようとスマートフォンをポケットに納める。