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 だらだらと授業についての話なんかをして、俺たちは駅までの約1キロを進む。

 どうして俺に話し掛けてくれたんだろう、でもわざわざ尋ねるのは不自然な気がする。

 高校生活も残り半年あまり、学友として親交を深めるのに特別な理由は要らないだろう。

 ただ俺が阿久津のことを好みだと思っているから意識してしまうだけ、きっとこいつも靴箱に居合わせたから声を掛けたに違いない。


 道程は半分を過ぎて、大通りから商店街への分岐に差し掛かる。

 阿久津はピタと足を止めて、

「こっちから行かね?」

と誘ってくれた。

「うん」

 活気あふれるみたいな商店街ではなくて、学用品を扱う洋品店があったり昔のままの外観を残す化粧品店があったり、広めの歩行車道という印象だ。

 ゲームセンターや流行りのスイーツ屋も無い、売れてるかも分からない古い店が並ぶ。

 そのアーケード商店街を歩きながら、阿久津の方をチラと見る。

 リップを塗っているんだろうか、艶々の唇。

 喋っては輝いて、たまに思わせぶりにペロと舐めるのがいやらしい。

「(そういや、)」

 俺の頭には嫌でもあのトピックが浮かんで来る。

 あの噂を聞くまでは、こんな些細な仕草も気になっていなかったのに。

 ただのクラスメイトから「一緒に帰る仲」にランクアップしたから、いい気になってしまった。

 話せば面白いし、好みの奴と並んで歩けば心が弾むし。

 浮ついて思い上がった俺の頭が、考えもせずに「言っちゃえ」と信号を出す。

 会話が途切れた瞬間、俺はあのことを次の話題として提示してしまった。
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