つまりは君は僕のモチベーションなわけで

茜琉ぴーたん

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ステージ13

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「ごめんなさい、あんまりね、動揺したり、慌てふためいたりしないじゃない?」

「どっしり構えるようにはしてるよ、リカちゃんが強い男が良いって言ったんだもん」

「うん…そうなんだけど…」

「なんなのさぁ……ん…リカちゃん、どうしよ、一旦抜こうか」

「うん……ごめんね」


 対面座位のまま里香りかちゃんはシーツへ濡れたお尻を下ろし、僕は縮こまったムスコからゴムを外して寝そべった。

「ふー…淡々と、してるのは本当だよ…人生、なんだかんだで思うように回ってるんだ…大きな挫折ってしたこと無い…大きな成功も無いんだけどね」

「出世は早いよ、大成功だよ」

「うん…リカちゃん腕枕してあげる…おいで………運が強いのかな、人の…縁とか…恵まれてる」

「そうだね………あ、そうだ」

 斜め上を見ていた里香ちゃんは頭をくるんと回して僕に向き直って、

宇陀川うだがわさんね、本店に帰って来るかも」

と実に興奮が醒める戯言たわごとを吐く。

 奴はハラスメントのスリーアウトで本社管轄下で鍛え直されているはずだ。

 ぞわぞわとあの当時の嫌悪感が足元から駆け上がって来た。

「ハァ⁉︎なんで、」

みそぎが済んだんじゃない?一般職だよ、白物」

「は…なんで…」

「元々営業力のある人だもん、堂々としてるし…岳美たけみくんが居ない間に幅利かせるかも」

 確かに奴はよく売るし、ねちっこく腐ったあの性格を除けば会社にとっては有能な馬車馬なのだ。

 模範囚として刑期を終えたということか、奴もなかなか悪運が強いようだ。


「…何かあったら必ず言って、ハラスメントだと思ったらすぐに通報するんだよ」

「もちろん…もう上司じゃないしね、越権行為があれば反論するし……早く…本店に…お家に戻って来てね」

「うん…子供たちにも会いたい…僕の顔、忘れてないかな」

「毎週テレビ電話してるから大丈夫だよ…」

「あとは…そうだな…家をさ、空き物件とか…チェックしてみて欲しい。僕もインターネットで調べるけど…空き家をリフォームでもいいや、僕はあと少なくとも2年ちょっとは兵庫に居るだろうから、その間に建てて住み替えとか…できたらいいな」

 長男が小学校に上がる年に新居に住めたらちょうど良い。

 そんな計画も立てているし記憶の中での近所の空き地に買い手が付いてないかとか、不動産情報も逐一チェックしている。


「マイホームか…ますます頑張らなきゃね、大黒柱♡」

「うん…働くよぅ、僕はモチベーションが無いと動けないんだ……ん、リカちゃん、復活してきた…いい?」

「うん、寂しくないように…いっぱい抱いて」

「可愛いなぁもう!」



 僕は時間の許す限り妻を抱いて、晩ご飯の時間にギリ間に合うよう新幹線に乗せてあげて見送った。

「…エネルギーチャージ完了だな…ふふ」

充電が切れたらビデオ通話でエッチなことでもしてもらおうか。

 僕はもう次のラブタイムを想像しながら兵庫行きの新幹線の中で弁当を摘む。

 目的なんて無く当たり前に就職して9年目、里香ちゃんはいつも僕の目標だったけど追い抜かした後は頼れる同志になった。

 目下僕のライバルは漠然とした売上目標額と言うことを聞かない部下、そして戻って来た宇陀川。

 新たな敵が出て来てくれてなんだか奮うんだ、里香ちゃんには言えないけれどそれが本音だ。



つづく
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