つまりは君は僕のモチベーションなわけで

茜琉ぴーたん

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ステージ13

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『もしもし宮前みやまえくーん、どうしたのさ、セクハラ疑惑って嘘だろ?』

「もちろんですよ…参ってます…」

 終業前の電話の相手は本社から聞き取りを委託された嬉野うれしのさんだ。

 僕に少しでも怪しいところがあれば本社のハラスメント担当部署が動くそうで…信じてくれてはいるけどいつもより慎重さが伺える。


『なるほどね…まぁ僕は昔から宮前くんが奥さんにゾッコンなのは知ってるから信じられるけど…振られた腹いせかな…やるねぇ』

「勘弁して下さいよ」

『いきなり遠方から来たやり手管理職だもんな、しかも単身赴任とあればイケイケだと思われるかもしれないね、ふふっ』

「笑い事じゃないんですよ…リカちゃんの…妻のケータイにもね、公衆電話でリークがあったらしいんですよ、『僕が浮気してる』って…」

『ふーん…?それは…ホワイトボードに書いた本人ってことかな』

「それしか…となると茶頭さとうさんですけど…彼女は妻と接点は無いはずです、顔も知らないはず」

僕のスマートフォンから情報を抜いたか、しかしこれを体から離した憶えは無い。

『いや……店内のパソコンから社員の情報は閲覧えつらんできるんだよ、社員番号か名前で検索できる。苗字から当たりを付けて控えてたんだろう』

「まぁ確かにできないことはない…」

『時間にすれば数分で終わる作業だし仕事中でも何を検索してるかなんて周りは気にしない…それが有力じゃないかな、宮前くんが彼女の前で電話を手元から離すようなことをしてなければ』

「なるほど」

『連絡網みたいな扱いで閲覧可能情報だから罰するのもな…確証も無いし…』

罰、だんだんと話が大きくなってくる。

 ただのセクハラ疑惑でここまで騒ぎ立てるなんてしたくないのだが…さらに言うとこんなにフランクに嬉野さんと話していること自体がおかしい。

 もし本当に僕がやらかしていたとすればこのやりとりは不公正、それこそ管理職と本社の癒着となり前任者の二の舞になってしまう。

 嬉野さんのことだから他の人にも聞き取りをしっかりするのだろうけど、事務所内には監視カメラも無いし誰が書いたかももはや分からない。

 しかして明るみになり茶頭さんが断罪されたところで僕に利が無くて、どうも腰が重い。


「……んー…とことんやってやりたいんですけどね…茶頭さんしか該当者いないし…嬉野さん、とりあえず妻はフォローしておきます。僕に関しては嬉野さんの評価に任せます」

『うん、本社にはそのまま報告しておくよ…僕は信じてるけど…僕の前任もこうして部下となあなあで不正を見逃しちゃった訳だしね、キッチリさせてもらうよ』

「当然です」

『まぁ、宮前くんが僕もあざむく性悪だったら大したもんだよ』

「やだなぁ、もう…」

 そう、もし僕がセクハラを巧妙に隠して懇意の上司に虚偽報告をするタイプならことは丸く収まるのだ。

 しかしやってないものはやってない。

 今回は疑惑を掛けられた上司として汚名を抱えたまま頑張ろう、真面目に仕事をしていればいずれすすげるはずだ。
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