つまりは君は僕のモチベーションなわけで

茜琉ぴーたん

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ステージ8

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 事が終わって息が落ち着いたら、里香りかちゃんはぽつりぽつりと宇陀川うだがわについて話し出す。

「フロア長ね、たぶん岳美たけみくんのこと…わざと怒らせようとしてるんじゃないかな?」

「…なんでだろ」

「自分の地位が危うい…から?あの人ね、セクハラの処分で転勤してきてるんだってよ?だから降格はあっても昇格はもう無いんだって」

「うん?」


 平社員から管理職になるには推薦や人事部直々のスカウト等があって、面談を行い適性を審査・判断される。

 僕は本社の人事からのスカウトを蹴って現場の管理職を希望した訳だけど、一度フロア長になってしまうと簡単には辞めさせられないらしい。

 本人の能力や態度で「相応ふさわしくない」と思われても、その人を推薦した管理職の顔を潰してはならんと妙な忖度そんたくが働くのだそうだ。

 つまり僕がヘマをしたら僕を推薦してくれた上司の顔に泥を塗ることになる。

 即降格はせずとも代わりが現れればてい良く「交代!」とできるので本社としても無用な派閥争いを避けられるというものだ。


「岳美くんが仕事できる社員ってのは分かってるから、交代させられるのが恐くて…精神攻撃してきてるのかなって…憶測だよ、」

「宇陀川さんを蹴落としてフロア長の座に着くかぁ…悪くないけど、あの人が今更平社員で売り場に立つのも変な感じだね」

 僕は非公式記録だがコーナー長就任最短記録を保持しているのだ。

 先輩を追い抜いていく気まずさへの覚悟はとうにしている。

 幸い周りは良い人だらけだったから嫉妬を向けられたりということも無かったのだが。

「大抵メンツに配慮して転勤させたりするけど…どうなんだろうね」

「ふむ…僕じゃなくて、リカちゃんが狙われてるって線は?」

 まさか本当にイヤらしい目で見ているんじゃない?僕が無自覚な里香ちゃんを注意しようとそう聞けば、彼女は

「んー…」

と、何かあったげに言葉に詰まった。


「え、何かあったの⁉︎やだよ、やだ、」

「無い、無いけど、『婚外恋愛、俺はOKなタイプ』ってほざいてたから…」

「気持ち悪いな…早く言いなよ、そういうことは…」

「仕事に関係ないことだから黙ってたの。ごめんね。嫌な気持ちがあると仕事に支障が出ちゃうかと思って」

「うん……うん、」

 確かにそれを聞いてしまうと宇陀川の印象は最悪だ。

 なまじ販売力が高いからそこを尊敬はしていたものの、私生活…特にこと里香ちゃんを矛先ほこさきにするとなれば僕だって全力で闘う所存だ。

「まぁ…リカちゃんにとばっちりが行かないようにするよ。表面上は言うこと聞いてればいいんだから…実力は見る人が見れば正当な評価をくれるさ。僕は…対外スキルは高い方だと思うんだ、いい人ぶるの得意」

「岳美くんはいい人だよ」

「そうでもないよ、結構腹黒いんだ」

 里香ちゃんは汗に濡れたお腹を触って

「そっか」

と笑った。


 その後も追加で1回抱いて、僕は支配感いっぱいで眠りにつく。



つづく
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