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ステージ8
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しおりを挟む奢ってもらったのにこんなに不味い飯は初めてだ。
僕は真っ直ぐ家に帰って、
「あ、おかえり」
と風呂場から覗いた妻を抱き締めた。
「ただいま、リカちゃん」
「どしたの、ごめん岳美くん、この子服着せてやってくれる?」
「うん、リカちゃんにも着せてあげる」
「私は自分で着るよ……フロア長とご飯だったんでしょ?珍しい組み合わせだね、何食べたの?」
脱衣所からリビングへ息子を抱っこして移動すると食卓には里香ちゃんが食べ終わった冷凍パスタのトレイが残っていた。
僕が居ないとこんなに粗食なのかと切なくなる。
「たまたまタイムカード押したタイミングが一緒でね、誘われて……カツ丼…でも家で食べれば良かったな…」
「たまにはいいじゃない、私も楽だし」
「そう?……そっか、」
「なに?何か…怒られる案件でもあった?」
素早くパジャマ姿になった里香ちゃんは頭にタオルを巻いて、僕の険しい眉間を指で伸ばしてくれた。
「……セクハラ紛いの…こと」
「え、フロア長って男もイケるの⁉︎」
「違う、リカちゃんのこと…」
僕は掻い摘んで宇陀川に言われた事を話す。
無の顔をした里香ちゃんは聴き終わると息子の保育園バッグに明日の着替えを詰め始めた。
「事を荒立てたいのかな、それとも幸せな僕たちを僻んでるのかな…考え過ぎか。まぁ気分悪かったよ」
「んー…私も極力個人情報は出さないようにするね…あの、岳美くん?」
僕があまりに表情を崩すので心配して、里香ちゃんは
「托卵、本気で疑ってる訳じゃないよね?」
と口をむすっと一文字にして見下ろし睨む。
「あ、当たり…前……違うよね、避妊失敗しただけだよね?僕の子だよねぇ⁉︎」
湯上り玉子肌の里香ちゃんはホカホカでいい匂いがして、僕はそのパジャマの脚を掴んでガクガクと揺すった。
「怒るよ……もう、影響されちゃってるじゃん…ばか」
「ごめん…イテ」
前回の僕のリアクションが面白かったのか、息子は最近僕の顔を平手で叩くのがマイブームになっている。
「こらこら、めーよ、ぺちんしたらパパ痛い痛いよ、」
「…リカちゃん、慰めて」
「ん?ん…お膝にくる?」
「うん…」
彼女がソファーに掛ければ僕は息子を差し置いて隣に寝転び、柔らかい太ももに顔を擦り付けて感触を楽しんだ。
「よしよし…パパは良い子ね、真面目で、乗せられ易くって、向上心があって、私は岳美くんのそういうところが好きなの。人に騙されちゃうところもね、ふふ」
「ん……リカちゃん、今夜どお?」
「いいよ、ちゃんとお風呂入って、歯磨きしてね」
「子供じゃないんだから…痛い」
息子は母の膝を独占する僕に腹を立てたようで、僕の後ろ頭をぺっちんぺっちん叩いては不満げな声をあげる。
そして寝室へと下がる時に抱っこされると彼は「ふふん」と得意げに僕を見下ろした…気がした。
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