上 下
55 / 67
ステージ13

55

しおりを挟む

「ッ…マジでッ…浮気とかッ…許さないんだからッ…」

「うん、あ、あー…リカちゃん、あー…」

「しっかり動いて、嫁に奉仕しなさいよ」

「あ♡気丈な、騎乗、あ♡」

「やかましい」

 食後の腹ごなしに駅前から歓楽街へ歩く事数分。

 手頃なホテルを見つけた僕らは真っ昼間だというのに有酸素運動でハッスルしていた。

 里香りかちゃんはよほど腹が立っていたのだろう部屋へ入るとすぐに僕へビンタして押し倒し、下半身だけ脱がせてまたがってしまう。

 当然間にコンドームの装着儀式はあったが、にしてもここまでスピーディーでムードの無いセックスは始めてだった。

「ゔんッ…ムカつく、副店長になったからって…横柄おうへいになっちゃって」

「なってない、普通にしてる、あ♡」

「こんな…疑うなら、私もついて来れば良かった、」

「リカちゃ、んッ♡ふア、今からでもッ、転勤、してもッ」

「しない、独り寂しく過ごしなさいよッ、私をイラつかせた罰、」

「仕方ないじゃん、うは♡リカちゃん、エッチはもっと、ラブラブしたい♡」

「うるさいっ」

 意に沿わなければきゅうと僕を締め上げる。

 全く会話にならない意思疎通もできないセックスは殺伐としていて…それでも僕の上で跳ねる里香ちゃんがエッチだから当然興奮する。

「リカちゃん、気持ちいい♡」

「ったり前よォ、私のことッ、好き、でしょォ⁉︎」

「もち、ろ、ん、」

「私だって、私だって、好き、なんだからァ!淋しいんだからァ!もっともっと、エッチしたいんだからァ‼︎」


 なんだ、僕ばかり想いが強いのかと思っていたけど里香ちゃんも追ってくれていたのか。

 はらはら彼女の頬を伝う涙を見れば僕は一層張りが大きくなった。

 でも完全に陥落かんらくさせたい訳じゃないんだ。

 僕に付き従うだけじゃ里香ちゃんの魅力は100パーセント発揮できないんだ。

 ニマニマ笑いかけた僕を睨むその眼差しはどこか弱々しくもあり頼りない。

「リカちゃん、ヤキモチ妬かないで、んッ♡あ、もぉ出ちゃう、」

「なんで興奮できるの、馬鹿にされてんだよ!」

「僕のためにリカちゃんが動いてんだ、興奮しない訳ないじゃんか♡」

「ムカつくッ!」

僕の胸を拳でとんと叩いて里香ちゃんは大人しくなって、涙を拭ってはえぐえぐと肩を上下させる。


 もう終わりかな、よいしょと体を起こして抱き締めれば妻はすんすんと鼻を鳴らして抱き返してくれた。

「分かんないの、岳美たけみくん、優しいけど掴めないからっ…どっか冷めてて、ドライで、私のこともっ…子供のこともっ…必要としてくれてるのかっ…分かんないときがあるの、」

「だから一緒に来れば良かったじゃない、まぁでもいずみ家の助けが無ければ難しかったよね、兵庫に来てたらリカちゃんのワンオペ育児だったかな」

「出世の邪魔はしたくないの、店長になればって言ったの私だしっ…」

「僕が決めたんだよ」

 それは二人で決めたゴールだ。

 そしてそれはもう手が届くところまで近付いている。

「僕、普段から『淋しい』とか言ってるよね、弱音吐きまくりだよ」

「そうだけど、なんか本心が見えないの」

「うーん…お義父さんが言ってた『人間らしさ』みたいなこと?どうしろってのよ」

 人の上に立つにはある程度感情を隠してポーカーフェイスを気取らなければやっていけない。

 嫌な客にもニコニコして対応していたのはそのための修行みたいなものだった。

 まぁ確かに身を焦がすような恋の経験も無いし、才能なのか勉強も仕事も血を吐くような苦労をしたことは無い。

 無機質なロボットみたいに見えているのなら心外だけど、それでも激昂げっこうするほど気持ちが波打たないから里香ちゃんの指摘は当たっているのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

W-score

フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。 優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...