つまりは君は僕のモチベーションなわけで

茜琉ぴーたん

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ステージ13

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「ッ…マジでッ…浮気とかッ…許さないんだからッ…」

「うん、あ、あー…リカちゃん、あー…」

「しっかり動いて、嫁に奉仕しなさいよ」

「あ♡気丈な、騎乗、あ♡」

「やかましい」

 食後の腹ごなしに駅前から歓楽街へ歩く事数分。

 手頃なホテルを見つけた僕らは真っ昼間だというのに有酸素運動でハッスルしていた。

 里香りかちゃんはよほど腹が立っていたのだろう部屋へ入るとすぐに僕へビンタして押し倒し、下半身だけ脱がせてまたがってしまう。

 当然間にコンドームの装着儀式はあったが、にしてもここまでスピーディーでムードの無いセックスは始めてだった。

「ゔんッ…ムカつく、副店長になったからって…横柄おうへいになっちゃって」

「なってない、普通にしてる、あ♡」

「こんな…疑うなら、私もついて来れば良かった、」

「リカちゃ、んッ♡ふア、今からでもッ、転勤、してもッ」

「しない、独り寂しく過ごしなさいよッ、私をイラつかせた罰、」

「仕方ないじゃん、うは♡リカちゃん、エッチはもっと、ラブラブしたい♡」

「うるさいっ」

 意に沿わなければきゅうと僕を締め上げる。

 全く会話にならない意思疎通もできないセックスは殺伐としていて…それでも僕の上で跳ねる里香ちゃんがエッチだから当然興奮する。

「リカちゃん、気持ちいい♡」

「ったり前よォ、私のことッ、好き、でしょォ⁉︎」

「もち、ろ、ん、」

「私だって、私だって、好き、なんだからァ!淋しいんだからァ!もっともっと、エッチしたいんだからァ‼︎」


 なんだ、僕ばかり想いが強いのかと思っていたけど里香ちゃんも追ってくれていたのか。

 はらはら彼女の頬を伝う涙を見れば僕は一層張りが大きくなった。

 でも完全に陥落かんらくさせたい訳じゃないんだ。

 僕に付き従うだけじゃ里香ちゃんの魅力は100パーセント発揮できないんだ。

 ニマニマ笑いかけた僕を睨むその眼差しはどこか弱々しくもあり頼りない。

「リカちゃん、ヤキモチ妬かないで、んッ♡あ、もぉ出ちゃう、」

「なんで興奮できるの、馬鹿にされてんだよ!」

「僕のためにリカちゃんが動いてんだ、興奮しない訳ないじゃんか♡」

「ムカつくッ!」

僕の胸を拳でとんと叩いて里香ちゃんは大人しくなって、涙を拭ってはえぐえぐと肩を上下させる。


 もう終わりかな、よいしょと体を起こして抱き締めれば妻はすんすんと鼻を鳴らして抱き返してくれた。

「分かんないの、岳美たけみくん、優しいけど掴めないからっ…どっか冷めてて、ドライで、私のこともっ…子供のこともっ…必要としてくれてるのかっ…分かんないときがあるの、」

「だから一緒に来れば良かったじゃない、まぁでもいずみ家の助けが無ければ難しかったよね、兵庫に来てたらリカちゃんのワンオペ育児だったかな」

「出世の邪魔はしたくないの、店長になればって言ったの私だしっ…」

「僕が決めたんだよ」

 それは二人で決めたゴールだ。

 そしてそれはもう手が届くところまで近付いている。

「僕、普段から『淋しい』とか言ってるよね、弱音吐きまくりだよ」

「そうだけど、なんか本心が見えないの」

「うーん…お義父さんが言ってた『人間らしさ』みたいなこと?どうしろってのよ」

 人の上に立つにはある程度感情を隠してポーカーフェイスを気取らなければやっていけない。

 嫌な客にもニコニコして対応していたのはそのための修行みたいなものだった。

 まぁ確かに身を焦がすような恋の経験も無いし、才能なのか勉強も仕事も血を吐くような苦労をしたことは無い。

 無機質なロボットみたいに見えているのなら心外だけど、それでも激昂げっこうするほど気持ちが波打たないから里香ちゃんの指摘は当たっているのかもしれない。
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