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ステージ10
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しおりを挟む『さて…レジのフロア長が空席になった、僕が次に言いたいことは分かるかな?』
「…『昇進する気はあるか?』、でしょうか」
『ふふ、正解!』
「やった、ありがとうございます!」
『でもレジじゃない、そっちは黒物のフロア長に入ってもらうよ。宮前くんは黒物のフロア長に繰り上がって欲しい』
「わ、あ…ありがとうございます!」
『僕と、君の上長からの推薦だよ。真面目に仕事してきたからね、そういう子は報われるようにしてあげたいんだ。君も、上に立つからには頑張ってる部下をしっかり見てあげてね』
「はい、分かりました…」
遂にフロア長就任が決まった、僕は帰宅してから里香ちゃんにありのままを報告するも彼女の反応は渋かった。
「そんな危ないことして…岳美くんまで変な疑いかけられたらどうするの、」
「だってアイツ邪魔だったんだもん、僕の声は無線に乗せてないんだ、上手にできたよ」
「……ずる賢い」
「ハラスメント野郎が消えた、フロア長の座が空いた、一石二鳥、ウマウマだよ」
るんるんと着替える僕を眺めながら、里香ちゃんは
「……岳美くん、昇進することの方が目的だったんじゃないの?」
と痛いところを突く。
「違うよ、アイツが降格したからって僕がそこにはまるとは限らないでしょ?怒らないで、結果オーライって話だよ」
と答えたものの、腹黒い僕は唇を噛み込んで本当の表情を隠した。
里香ちゃんを助けたかったのも本心、働きやすい環境にしたかったのも本心、フロア長に空きを作りたかったのも僕の本心だ。
「んー…未だに腹の底が読めない」
「ふふ…という訳でさ、準備期間と研修合宿含めて就任は2ヶ月後なんだ、予定日よりは早いんだけど…研修で留守にするから、早めに里帰りして向こうにお世話になった方がいいと思うんだよ」
「そう…か、私ももう少しで産休入るし…うん、言ってみる」
「僕が言うよ、前より子供の分もお世話をかけるんだ…一緒に行ってお願いしよう」
息子を抱いて里香ちゃんのおでこにキスをして、僕は信頼を取り戻すべく紳士的に笑って見せる。
「…しっかりしてるね…泣き言吐いてた新人の頃が懐かしいよ」
「もうすぐ7年目なんだ…強くなったんだよ、部下ができるんだ…厳しくならなきゃね」
「……ほどほどにね」
そうだね、宇陀川のようにはならないよ…それだけは堅く心に誓い、妻の用意してくれた夕食に舌鼓を打った。
つづく
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