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ステージ15
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しおりを挟む合宿を乗り切って店長に無事就任、新たに他店から来た副店長がグイグイ押して来る系の奴だったので僕は安心して穏やかなキャラクターを続けることができた。
もしも気弱なタイプだったら僕も少しは強気にいくけれど、店のツートップがどちらもグイグイな性格だと部下も息が詰まるし避難所的なポジションに居ることは皆にとってプラスに働くだろう。
うちの息子たちはどちらも小学生になり学童に入り、里香ちゃんは早番のみのフルタイム勤務に戻ってもらった。
そしてこの春に新入社員も入り、彼女は他の管理職の意見もあってコーナー長へ昇格。
いかにトラブルを起こさず違算を出さず定時退勤できるか奮闘している。
「宇陀川さん、よく売ってくれるのは助かるんですけど上から目線が偉そうで鼻に付くってクレーム入ってます」
「…すんません」
「もう管理職じゃないんだから、腰低くしてくださいよ…僕が頭下げてるんですから」
「誠に申し訳ありません」
もはや腐れ縁くらいに馴れ合うようになった宇陀川と僕はいまだに部下と上司の関係、
「はは、嘘でぇす」
「殺すぞてめぇ!」
こんなやり取りも日常茶飯事である。
「なぁ宮前、いい加減俺をフロア長に推薦しろよ」
「できませんよ。ハラスメントの通報履歴が残ってるんですから…あと3年くらいは無理みたいですよ」
「くそ」
調子にさえ乗らなければ彼も今頃上り詰めて店長くらいにはなっていたはずだ。
つくづく僕と僕の妻を敵に回したことが運の尽きだと…そう思っている。
さて、店長に就任した際に兵庫の嬉野さんから連絡があり、彼は自分のことのように褒めて喜んでくれた。
向こうも概ね順調だそうで、『こっちで良い子を育成してさ、その子たちが将来どこかでかち合ったり出世争いすると思うと感慨深いね』とのことだ。
僕が「カブトムシじゃないんですから」と返せば嬉野さんはツボにハマったのかしばらく笑っていた。
ちなみに兵庫の皇路西店で僕にセクハラトラップを仕掛けた茶頭さんは、その後婚活にて良き伴侶を見つけてパートとして店に残っているらしい。
嬉野さんは巡店する度に評判など管理職から聞き取りをしているそうだけど、これといって悪評も無く真面目にやっているそうだ。
そうなると何故僕にああまでしたのかなと疑問にもなるけれど、愛しさ余って憎さ100倍とかそんなものなのかなぁと…そう納得することにした。
現在の店は実に穏やかだ。
冒頭でも語ったように僕は飄々と穏やかな店長、里香ちゃんはちくちくミスを突いてくるお局、僕たちの結婚前の初々しさを知る者はほとんど異動で少なくなっている。
なので『優しい宮前店長』と『厳しい泉コーナー長』の姿はスタッフに定着しつつあり、皆が皆「どうしてあの二人がカップルなんだろう?」と疑問に思うらしく…面白いなぁと感じている。
つづく
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