つまりは君は僕のモチベーションなわけで

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
49 / 67
ステージ13

49

しおりを挟む

 モヤモヤ、ムカムカ、帰宅して晩ご飯を食べていると申し合わせたように里香りかちゃんから電話が入った。

「もしもし、リカちゃん?ちょうど良かった、声聞きたいと思ってたんだ」

岳美たけみくん、浮気してない?』

「え、」

開口一番になんてことを、もしかして里香ちゃんはエスパーなのか。

 背中にぞわぞわと茶頭さとうさんの感触が蘇る。


「なにいきなり?してないよ。するわけないじゃん」

『公衆電話からさっき掛かってきたの。岳美くんが浮気してますよってそれだけ言ってガチャ切り。女の人の声で…』

「は?リカちゃんのケータイに?」

『うん……あの……してない、よね?』

 語気が弱まって悲壮感が電波に乗ってこちらまで届く。

 泣きそうな里香ちゃんを想像すれば僕も眉間にシワが寄った。

「しない、断言してもいい。寂しいのは確かだけど、それを浮気で解消するほど落ちぶれちゃいないよ」

『じゃあさっきの電話、なんなんだろ…嫌がらせ?』

「……繰り返し来るようだったらまた教えて、公衆電話からの着信は拒否していい。僕は…そうだな、必要なら勤務表と残業実績と…通話記録でもなんでも提示していい。神様と仏様に誓って不義理はしない、絶対だよ」

 元々連絡も密にしているつもりだけど、こうして離れていれば顔色も分からないし簡単に騙し通せたりするだろう。

 僕は浮気なんてするつもりはさらさら無いけれど、妻にバレずに不貞が可能か不可能かと聞かれればそれは前者だと思うのだ。

 いや、しないけれど。


『うん…そうだよね、疑ってごめんなさい』

「いや、会えないからそりゃ不安だよね」

『不安というか、こっちは働きながら子育ても保育園のことも全部してるのに女遊びしてるんなら腹立つなぁって…瞬間的にカッとなっちゃって…ごめん』

「…ヤキモチじゃなくて?」

『うん…ごめん、私も疲れてるのかも』

「いいよ、そうだね…お義父さんもお義母さんも任せっきりで申し訳ないな…どこかでまた連休取って帰るから…愛してるよ、リカちゃん」

『うん…私も、岳美くん、愛してる』

「…じゃあね、おやすみ」

『おやすみ』


 電話だと素直でいいな、僕はそんなことを思い晩ご飯を平らげる。

 電話の主が気になるところだが、今日のこのタイミングで掛けてくるあたり…もしかして茶頭さんかな、なんて不穏なことを考えないでもない。

 しかし彼女が里香ちゃんの電話番号を知っているはずはない。

 店舗どころか名前だって知らないだろうし…謎は謎として、僕は気持ち悪いまま就寝した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...