つまりは君は僕のモチベーションなわけで

茜琉ぴーたん

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ステージ9

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「……」

 簡単に妊娠させるもんじゃないな。

 でも奴に配慮して子作りを躊躇ためらうなんて冗談じゃない。

 社員だって一個の人間なんだから、それぞれに人生設計があって当然なんだ。

 人に遠慮して家族計画を設定するなんておかしいこと、人員が足りないなら管理職や人事部が動いてどうにかすることで…

「あ、人事、」

ここで僕は頼りになる本社・人事部のエリアマネージャーの存在を思い出す。


「…もしもし、嬉野うれしのさん、ご無沙汰してます、甕倉カメクラ本店の宮前みやまえです、あのー…ちょっとご相談があるんですけど、」

 電話した先は僕をいち早く見出してくれた嬉野さん、まだ休憩時間が残っていたのでヒソヒソとハラスメントのガイドラインについてそれとなく確認させてもらった。


「……、……みたいな、そういう発言って…そちらから見てどうなんでしょう?」

『んー、マタハラだしセクハラ。…ちなみにそれって、宇陀川うだがわさんのこと?』

「ご存知ですか」

『なんとなく分かるよ。悪名高いから…そうねぇ…能力は悪くないからポジションは変えずにいるんだけど…ぼちぼちかなぁ…いや、そういう話はぽつぽつあるんだけど、相手が女性ばっかりだから退職して逃げることで泣き寝入りってケースが多いんだよね…何か証拠とか残してない?』

「…録音って、勝手にしたら罰せられます?」

『……悪い子だねぇ…盗聴もダメだよ。他に証人があればなんとか…ハラスメントは専門の部署があるんだ、人事の立場からそこにチクるのも僕の仕事。言ってみるよ…優秀な奥さんにはまだまだ働いてもらいたいからね…あと女性社員の産育休取得率向上、これも僕らの責務なんだ、はは』

 なるほど個人の怨恨えんこんだけでは引き摺り下ろすことはできないか、ならば公式にやってもらうしかない。

 僕は腹をくくり礼を言って電話を切る。


「ふぅ…証人…ね、」

 この店舗の若手女性は何かしら奴からモーションというかちょっかいを出されている。

 しかし嫌悪感を表に出すと奴からの当たりが強くなるので皆心を殺してにこやかに努めているらしい。

 営業ならば売り上げで見返すこともできるが女性スタッフの大半はレジか事務か外部提携業者だ。

 細かい所作をネチネチいびったり派遣切りの恐怖を匂わせたりと実に嫌らしいやり口をするそうだ。

 アルバイトならば辞めて逃げるが社員ならばそうもいかない、報復を恐れる女性陣を証人にするのは難しいのかもしれない。
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