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ステージ3
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しおりを挟む「オラオラ系っていうか…暴君じゃん…酷いことされてない?」
「暴力ってこと?ないない、でも久々に会ったらコレジャナイ感っていうか…ときめかなくてさ…なんか無理だった。まぁ叩かれそうになったことはあるよ、応戦したけど。そういうのが女らしくないんだってさ」
そう言って力こぶポーズを作って見せる彼女は逞しくて、僕はようやく彼女が高校時代少林寺拳法部に所属していたことを思い出す。
「いや、……よく無事だったよ、うん…た、食べよ」
「あれからね、宮前くんと気まずくなってから…また更に仕事ぶりが良くなったじゃない?悔しさをバネに、って感じなのかなーって思ったら…フリーだって言い出せなくてね」
「うーん」
「もしよ?私が彼女にしてって言ったらまたナヨナヨした宮前くんになっちゃうかな?」
「………どうだろ…仕事はもうパターン化してるし打たれ強くなったから…てかさぁ、僕のモチベーションがいつまでも泉さんだと思わないでよ。2回も振られたんだ…」
若干の不満があるとすればヨリを戻さなかったことをすぐ教えてくれなかった点か。
日和見な態度は僕を試しているようで、品定めされているようで気分が悪かった。
惚れたからといって舐めた態度をとられては男として黙っていられない。
彼女の元カレほどではないが僕にだって男のプライドというものがあったのだ。
しかし
「鼻を明かしたいって原動力だってさっき言ったじゃん…そっか、いつまでも私を好きでいてくれるわけじゃないよね、思い上がりだったわ、ごめん。食べて帰ろうか」
と彼女が唐揚げにザクッと箸を刺すと、
「うー、嘘だよ、嘘、泉さんをギャフンと言わせたかったんだ、惜しい人を振っちゃったなって思われるような…頼れる…男に…」
と僕はやはり簡単に白旗を上げてしまう。
「…なんで私なの?他にも女の人はいるじゃない」
「いるよ、いるけど…正直ね、もう意地だよ。しょうがないじゃんか…こんな風に2人きりで食事したの泉さんだけだし、好きになっちゃったんだから…」
「そう…ありがとう…最初に告白してくれた時はね、全然意識してなかったの。でも宮前くんのこと目で追ったり観察したりするように…気にかけるようになってね、ただの同僚よりもう少し…気になる人になってたの」
「…そう」
「宮前くん、」
僕が目線を上げると油に濡れた唇はニコッと笑い、
「好き。私と付き合って♡」
とスローモーションで動いて見えた。
「え、えぇ、僕が言いたかったのに」
「ふふっ、早いもん勝ちだよ、ね、返事は?」
「よ、よろしくお願いします…」
なんだか釈然としなかったが交渉は成立、僕たちの交際はこの日から始まった。
つづく
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