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エピローグ・僕の人生は君と共に
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しおりを挟むそして現在。
「リカちゃん、約束通りTバック穿いてくれたんだ」
里香ちゃんが歯磨きしている洗面所に入った僕は、脱衣カゴに落とされたレースのパンティを掴んでぴろんと広げた。
「…言われたから…仕方なく…」
「ん、こんな透け透けのパンツ穿いて仕事してたんだ…エッチな社員だなぁ♡」
「ばか」
「………リカちゃん、見て」
「………ぺっ…なに、きゃ!」
口の端に歯磨き粉を付けた妻はモゴモゴと僕を罵倒したので、うがいをしてスッキリしたその顔の前に入浴前の裸体を見せてあげる。
「ムラムラしない?」
「しない」
「疲れた夫の身体、洗ってくれない?」
「なんでよ…」
「妊娠中は入浴介助してあげたじゃない」
「むぅ」
恩は売っておくものだな、里香ちゃんは困った顔をしたけれどパジャマを脱いで僕のお風呂タイムに付き合ってくれた。
「あー…気持ち良い…妻に洗ってもらうとか…僕は前世でどれだけ徳を積んだんだろうね」
「…知らないよ…」
「タマの裏もしっかりね」
「……むぅ」
局部も胸も背中も綺麗にしてもらって浴槽へ、僕は嫌がる里香ちゃんをまぁまぁと引っ張り湯船へ浸ける。
「もぉ…」
「良いじゃない…夫婦の時間だよ」
「……疲れてない?今日はクレーム対応してたでしょ、大丈夫?」
「うん、メーカー修理で落ち着いたから大丈夫だよ。分かってくれたし…ふぅー…僕の頭で良ければいくらでも下げるさ」
担当者が説明してフロア長が出て、大概それで納得される方が多いのだが今日の件はそれで収まらなかった。
だから最後の砦・店長である僕がカウンターへと出たのだ。
よく「責任者を出して」なんて簡単に言う人が居るけれど、最初からトップが出てしまうとそれで収束しなかった場合に打つ手が無くなってしまう。
なのでたまにフロア長にも「責任者です」と対応させるようにしている。
客が見ているのは自分への誠意だ。
方針が定まっていれば正直誰が出たって同じなのだが…それでも肩書きに皆弱いからトップを呼んで上客扱いして欲しいみたいだ。
「前みたいに…抜け殻みたいになっちゃうのが怖いの。何かあったら…ある前に相談してね」
「うん…適度に毒吐いたりしてるから平気だよ。定期的に可愛い妻を抱いてスッキリしてるし」
「あぁそう」
僕の少ない勤務歴の中でも、ハラスメントや精神疾患で店を去る者にはそれなりの数関わった。
別にノルマなんてものは無いけれど目標はある。
小売店の責務は売り上げな訳で、僕がどれだけ頭を下げようが部下が丁寧な接客で褒められようがそれらは数値には表れないし上はデータでしか店のパワーを測れない。
なので言ってみれば売り上げさえ上がれば気の抜けた対応をしようが一見さんがほとんどでリピーターが居なかろうが店としては充分だ。
けれど対応だって売りの1つなのだから僕らは紳士然と振る舞う訳だ。
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