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ステージ13

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 何も起こらなければ良いけど…そう思いつつ過ごすこと3ヶ月。

 遅番の僕はいつも通り閉店業務へと入った。

 店を締めるというのは扉だけのことではなくて、レジ精算した売上金を集計して金庫へ納める、データ上の金額と相違無いか確認する、それがメインの仕事である。

 今夜の金庫担当は茶頭さとうさん。

 あれからささやかなアピールを受けつつも勘違いなら可哀想なので、ここ最近はいっそ極力物理的に近付かないようにしていた。


「できました、オール相違なし、翌日準備オッケーです」

「よし、じゃあ上がろう、お疲れ様」

「はい、お疲れ様です…」


 裏口を閉めて

「じゃあ」

と彼女に背を向けて数秒、僕は背中にどんと強めの衝撃を受ける。

「ぅわッ⁉︎」

 柔らかい胸の感触、上着にしがみ付くのは細い指、あぁ面倒くさい。

 なんで僕のモテ期がこんな時に来るんだ?まず立ち止まって両手を挙げた。


「なんでしょうか、茶頭さん」

「あの、私、副店長のこと…好きなんです」

「はぁ、それはどうも…とりあえず離して下さい」

「単身赴任なんでしょう?私、秘密は守りますよ」

 そう言って顔を背中にうずめる仕草に僕ははらわたが煮え繰り返る。

 今ワイシャツの上に着ているパーカーは里香りかちゃんがプレゼントしてくれた物だ。

 薄汚い女の化粧が付着したと思うとまこと腹立たしく気色が悪い。


「僕は妻がいますから。ご期待には添えません」

「でも、お寂しいでしょう?」

「……妻を愛してるので。他の人はなんとも思いませんよ、帰ります」

「残念ですぅ」


 何が残念だ、僕は上着を脱いでぐるぐる巻きにして車の助手席へ叩きつけた。

 わずらわしいな、僕が例え独身だったとしてもあんな女にはなびかない。

 都合のいい女に自分から成り下がるなんて品の無いことをしてしまう、そんな女に魅力を感じるわけがないじゃないか。
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