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ステージ15
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しおりを挟む「白物、振るわないですねぇ」
「この時期はこんなもんだろ、シングル用は充分売れてる」
「宇陀川さんの頑張りが足りないんじゃないかなぁ」
「あぁ?吐かせこの若造が」
本店の副店長に就いて半年。
勤続12年目の僕は年齢も社歴もだいぶん先輩な宇陀川へ適当な丁寧語だけで接するようになっていた。
奴もとい彼はやはり売り場に居れば至極優秀で、指名客も多いし月毎の売上額も店内のトップに君臨している。
「宇陀川さんさ、マジできる営業ですよね」
「そりゃ褒めてんのか」
「褒めてますよ、パワハラセクハラの糞野郎だったけど居てもらうと非常に店としては助かりますよ」
「熱り冷めてんだから黙れよ」
一時は敵対していた僕たちだけど、今は並んで昼食を摂るくらいには打ち解けているのだから不思議なものだ。
よほどのキツい躾直しをされたのかそれなりに善人というか無害な人間になっているし、さすが管理職をやっていただけのことはあって肝も据わっているし何事にも動じない。
客の望みを察知する能力に長けているし難しい客でも飄々といなす。
誰にでも何にでも学ぶところはあるものだ、僕は彼に存分に働いてもらい協力体制を敷くことにした。
あの一件を知るスタッフには僕が個別で話し合いを持ち、「宇陀川はもう悪さはしない、気まずいだろうが堪えてくれ」と頭を下げて回った。
これをしておかねば僕がヘラヘラと彼に媚を売っているように見える。
僕としては『過去を赦した寛大な男』という立ち位置で居たかったし社員同士の潤滑油的な存在になれて株が上がったように思う。
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