上 下
2 / 85
1章…人生計画

2

しおりを挟む

 就職してから淡々と過ごすこと半年。

 伸夫先生が地元のフォーラムで講演をするからと同じ甕倉出身の私が前乗りのお供をすることとなった。

 新幹線を手配して食事を準備して、先生はご自宅にお帰りになるが私は家無しだ。

 ホテルを予約する旨を匂わせれば先生は予想通り

「浦船さん、君もうちに泊まりなさい」

と提案してくださる。

「…よろしいのですか?その…ご迷惑では」

「良いよ、うちの…いや、とにかくそうしなさい」

「はい、ではそのように」

何か見せたいものか会わせたい人でもおありなんですね、とは言わず少し困惑する顔を作って、でも最後には微笑んでおいた。


 ついにこの日が来たんだ。

 その夜、寝る前のフェイスパックをワンランク良いものに替えてベッドへごろんと横になる。


「…和臣かずおみさん…か…」

 私はその日、伸夫先生の家で長男の和臣さんに引き合わされる予定となっている。

 先生は何も知らないのだ。

 ただ地元遊説の機会ができて都合良く同郷の秘書がいて、それが自身の息子と5歳しか違わないし良き仲になるのではないかと…偶然が重なったことでそんな発想にいるのだ。

 操作しているのは先生の父親でこれまた元国会議員のご隠居・太郎たろうさまで、私の人生計画を作ったのもこの人である。
 

 ご隠居は私の養母に要望を伝え、彼女が「適性あり」と見込んだ私がその役に選ばれた。

 ちなみに『要望』は『孫・和臣に男としての自信を持たせる』こと、そして『秘書として公私共に支える』女になることだ。

 つまり嫁ぐ訳ではなく夜のお供だ。

 まぁ夜に限らず求められればいつでも応じる、ほぼ毎日共に過ごしてあらゆる点で彼を助けていくという…男性にとって都合の良い女ということだ。

 そして彼は適齢期になると由緒正しいご家庭から妻をめとり世継ぎを産ませて家庭を作るのだ。

 私は練習相手であり暇潰し…そして独りで寂しく死んでいく。


 伸夫先生はご隠居がこんな計画を練っているなんて知らずに私を連れて来ようとしている。

 もし知れば私は仕事もお払い箱になって露頭に迷ってしまうだろう。

 だって先生は清廉潔白で正義感に溢れる真面目な議員、父親がそんな汚らわしいことをしているなんて知ると失意で命さえ絶ってしまう恐れがある。

 なんせご隠居から私の養母には莫大な金が代金として支払われているのだ。

 それは私が買われた額、つまりは私は商品として売られたのだ。

 その金の出処はやましいものではないにしても人道に反する行為であることは確かで、父を尊敬し児童福祉にも注力してきた先生にとってはとても信じられないことだろう。


「自分の親が人から文字通り女を買ったなんて…関係も信頼も全部無くなっちゃうよね…」

パックの端が渇いてくると剥がして手で丹念に馴染ませて乳液を重ねる。

 肌が吸収する感覚なんて分からないけれど、手がさらりと乾けば上からワセリンを塗り重ねて保湿の仕上げとした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

処理中です...