恋を知らないセクレタリー・ドール…心が無くても雇っていただけますか?

茜琉ぴーたん

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14章…悪い人

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 偽薬とは有効成分の入ってない偽物の薬のことだ。

 ピルにも一部含まれているが、「飲む」ことで心理的な安心を得たり、認知症患者の過剰服薬を防ぐなどの用途で使われるものらしい。

 それどころか薬だと信じて服用することで思い込みにより本当に症状が緩和したりする人もいるのだとか。

 その程度の話は私も知っていたのだが…それを和臣さんは私に飲ませていたというのか。

 ピルは女性ホルモンの血中濃度を上げて排卵をコントロールする薬品だ。

 飲み続けなければ効果は落ちるしタイミング次第では抑制されず排卵してしまい…そこに膣内射精すれば当然だが妊娠の可能性は上がる。


「…ぎ…何を言って…」

「ブドウ糖を固めたものだから体に影響は無いよ。君が処方されているピルに似た2色分の偽薬を探して入れ替えた。婦人科に通う日も把握していた。錠剤のシートを加工する会社に同級生が勤めていてね、個人的にお願いしたんだ。君が処方されているピルのパッケージに似せたデザインを印刷して偽薬を詰めてパッケージングしてもらった」

「は…?」

「よく見てみると良い、薬品名が違うから」

 それを聞いて手荷物からピルを取り出して見たものの、それが偽物かどうかなんて分からなかった。

 薬品に個別に付いている商品名なんて覚えてなかったし、まさかまるごとすり替わっているなんて想像もしていなかったし。

「なに…」

「ピルケースと別で持ち歩くとは想定外だったからね、ギリギリのことをさせてもらったよ。あ、既存のピルを模しただけで騙った訳ではないよ。小さく『食品です』と入れているし、加工業者も正規の仕事としてやってもらっている。しかし僕が居ないときにシートをまじまじと見られてはバレてしまうからね、毎日、きちんと飲んでいるか貼り付いて確認したんだ」

 確かにそうだ、彼は投薬時間を知らせるアラームが鳴ればどんなに事後でぐったりしていてもベッドから飛び起きて、ケースを使う私をニコニコと眺めていた。

 時には自ら開封して口まで運んでくれたし、何かしら用事を作ってその時間は確実に一緒にいた。

 しきりに話し掛けては錠剤から意識を逸らしていたのか。

 普通なら鬱陶しいと思うところだけど、自分がプレゼントしたピルケースを使う様を見たいのだろうと微笑ましくも感じていた。

「……」

「ある頃から僕はよく君のあちこちを舐めるようになっただろう、それに伴って気を遣った君の入浴時間が延びると予測して…実際その通り君は長風呂をしてキレイにするようになった。そこでできた隙に、下調べをしたり家探しをしたり…偽薬が本物にすり替わっていないか確認をした」

「も、もし持病の薬などで命に関わることがあったら…」

「だからそれも調べたんだ。君の既往歴も通院歴も。スケジュール帳も遡ってチェックした、薬手帳や診察券なんかも見せてもらった」

「な、な…」

「君が定期的に通院してるのはピルを貰う婦人科だけ、節制しているからここ数年は風邪も引いてないようだな、さすがだよ聖良」


 そりゃあ予定は全て細かく記録していたしなんなら領収書も診療明細などもきちんと綴じて分かりやすく纏めていた。

 私は彼の動向を管理していたつもりだったのにまさか自分も監視されていたなんて思いもしなかった。

 私が不在でも構わない時間帯に病院に行ったり私的な買い物をしたりしていたのに、もしや興信所でも付けているのか、いやもうそれはどうだって良いか。
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