61 / 85
12章…血統の価値
61
しおりを挟む「聖良、座って……改めて言うよ、結婚しよう」
「は……?あの、私は和臣さんとはそういったことは出来ませんと」
「でも子供が出来た、産むべきだ」
「いや、ですから」
頭を抱えて説得方法を考えようとすれば、彼は携帯電話を手にボタンを操作する。
「ちょっと待ちなさい、………あぁ、父さん?今良いかな。あのさ、突然だけど浦船さんに子供が出来たんだ」
「ちょっ…」
「…え?もちろん僕の子だよ、……うん、あぁ、大事を取って休ませるさ、……うん、ありがとう、また段取りを決めたら実家に報告に帰るよ、母さんにも伝えておいて……うん、良いよ、お叱りは僕がいくらでも受ける。浦船さんとでなければ嫌なんだ……うん、じゃあまた、………ふー…どうだ、これで逃げられないぞ」
「…っ…なんてことを……あ、電話……伸夫先生…」
「出なさい」
「っ…はい…もしもし……えぇ、お久しぶりでございます…はい…あ、ありがとうございます…えぇ…そうですわね…」
舞い上がった伸夫先生は私にもお祝いコールをくれて、あまりの喜びように「入籍するつもりは無くて」なんて口が裂けても言えなかった。
そして電話先の元上司は息子の不手際を詫びたりと初孫への喜びを讃えたりを繰り返す。
これは後で「あれは嘘です」と撤回できるだろうか、丁寧に明言を避けつつ挨拶をして電話を切った。
「………和臣さん、どうするおつもりですの」
「どうって、だから結婚しようと言っている」
「だから、それは出来ないと」
「契約だろう?じいちゃんに直談判してやろう、いくらで君が買われたのか知らないが契約違反だと言うならその金は僕が肩代わりしよう…それならどうだ?買い主は僕、契約の譲渡だ」
これだから金に苦労したことのないボンボンは…その案は不可能ではないが元の買い主であるご隠居の要望が叶えられないので却下されるだろう。
「いえ、ご隠居さまは名誉を」
「僕が頑張って国会議員になれば良いんだろう?もっとも、その頃じいちゃんが生きてるかどうか分からないがね」
「不謹慎な…」
「こうして曾孫も出来たんだ、どうやってでも了承させるし…どうにでもなるさ」
ご令嬢との子ならともかく私との子だから認められるか分からない、
「血筋を…私のような者を縁続きにしては城廻家の名が汚れてしまいますわ」
と渋い顔で訴えるも和臣さんはケロッとして笑い飛ばした。
「あはは、聖良を挟んで汚れる血なんか大したものじゃないさ」
「世間体ですとか…周りから何と言われるか」
「なら聞くが聖良、名家の女性と縁続きにしたがるのは何故だ?メリットは」
「それは…」
「親の会社とかコネクションとかは抜きだぞ、その血を選ぶのは何故だ」
「そりゃぁ…持って生まれた地頭の良さですとか…代々秀才を生む家系はありますでしょう?親戚筋に変わり者が居らず平均以上の生活水準で生きられる財力と…それに教育ですわ、きちんとした躾ができて勉強を教えたり教養高い女性でなければ…」
和臣さんを支えて家庭を守れる女性でなければいけないだろう。
育ちが良くて何なら気品があって学も無ければならないだろう。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる