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4章…お慕いしております

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「きゃ」

「僕は……ごめん、こんなことを思うのは初めてなんだ、浦船さん…君が言う通りたった2日だ、ほんの数時間しか君を知らないのに…趣味も合うし…君と話していると楽しい。僕は…」

逡巡してらっしゃる難しい眉毛も葛藤が現れた眉間のシワも男らしくてそそられる。

 私がたぶらかしたことにして身を任せたって誰もとがめはしない。

 だって和臣さんは童貞ですもの、初めて触れ合った懇意の女性に好意を伝えられて舞い上がっているに違いないはず。

 チラと確認してみたがジーンズの股間はシートベルトでよく見えない、

「(まぁそこまでさかってはないか)」

しかし私の手をもにもにと握って離さないことがもう答えみたいなものだ。

「う、浦船さん!」

「はい、」

 来たか来たか、膝を揃えて運転席へ向き直れば和臣さんは

「好きだ、け、結婚を前提に…お、お付き合いをして欲しい…」

と蚊の鳴くような声で想いをり出した。


「あ…」

「いや、すまない、いきなり結婚とは堅苦しいと思うだろう。でも…僕は、一生ひとりの人と添い遂げたいと…ゆ、夢みたいなことだが…父と母を見てそう思っている」

「そうですか…」

「ど、どうだろう…いや、答えはまた今度で良い。早急過ぎたんだ、なんだか…のぼせ上がってしまった、本当に経験がとぼしくて恥ずかしい…ちょっと仲良くなったからといってこんな…す、すまない、やっぱり忘れてくれ」

 ぱっと手を開いたら和臣さんの体温を貰った私の手がレバーへと降りる、思わせぶりに丸っこい先端を撫でてみても良いけれどその先は期待できなさそうだ。

「…そう、ですか…分かりました。すみません、差し出がましいことを申しました…」

「え、あ、うん…」


 さてどうしたものか、押して引いての駆け引きなんて和臣さんは熟知してなさそうだが彼は今引いた状態だ。

 「でも諦められない」とすがればとっととカップルになれそうではある。

 しかし私は真剣交際など求めてはいないのだ…都合良く性欲を発散してくれる人形として扱ってもらうことが任務なのだ。

「(まぁ真面目な人だから想定内ではあるけど…こんな早い段階で結婚の話を出してくるのは驚いたな…)」


 仕切り直しかと体勢を戻し発進に備えたら、さっきから妙に息の荒くなった和臣さんが歯を食いしばり「ふー、ふー」とかすれた呼気を漏らし始める。

 ひたいにはあぶら汗、

「…和臣さん?」

と声を掛けたら

「すまない、」

と彼は車を降りてコンビニへと飛び込んだ。


「……え?」

 さては腹を壊したのか、海鮮丼はどれも新鮮で美味しかったし元に同じメニューを食べた私はぴんぴんしている。

 私と話をしている間も迫り来る便意と闘っていたのかと思うとまた一層彼が可愛らしく感じる。

 車のキーはコンソールボックスに置いてあるしどれだけ時間がかかるか分からない、私はとりあえず運転席へ移動してエンジンを切った。

 そして和臣さんの窮地を救ったコンビニ様へ礼を尽くそうと、何かしら買い物をするために建物へと入る。
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