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12章…血統の価値
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しおりを挟む「落ち着いたかな……前に…ヨコハマの試合を観に行ったろう、その時君は本気で応援していたろう?」
そうだ、初めてのスタジアムでの観戦は周りのファンとの一体感にえも言われぬ高揚感を得た。
皆で同じものを応援する喜び、興奮、そして達成感…あの時私は確かに地元球団・ヨコハマシーサイドドリームスのファンだった。
和臣さんの趣味だからといって彼と同じ年数だけ親しんでいるんだから当然か、無意識に試合情報をチェックしてしまうくらいには私は馴染んでいるし自前のレプリカユニフォームだって毎年買い足してしまっている。
「……」
「サワタリ選手の一軍復帰が決まったとき、君はいち早く僕に連絡をくれた。復帰戦で彼がホームランを放った瞬間、あれはテレビ観戦だったが…君は僕よりも先に『やった!』と叫んで僕の手を取り飛び跳ねて喜んだ。あれも作り物か?」
「……いえ…嬉しくて…つい…」
同じものを応援して喜びを分かち合って、メガホンを振って祝杯をあげて、世の中の人が当たり前にしていることを当たり前に出来ていた。
いつからだ、私はどんどん人間になっていたのか。
悩むことでもないのに口をへの字に曲げる私の煮え切らない様子を和臣さんはくすと笑い、額をくるくる指でなぞって
「…聖良、君は…いつから僕に仕えると決められていた?」
と少し脱力して尋ねる。
「えぇと…15年以上は前…でしょうか」
「…人生の半分以上か」
「はい、それが何か?」
「いや…君は僕の趣味に合うよう学んだと言ったが…僕の情報を常に入手して更新して、僕の好みになるように気に入られるように自我形成する年齢から叩き込まれて…それってさ、もう許嫁じゃないか?」
またもや目から飛び出る鱗、お金が絡んでいるからドロドロと汚らしい話だが感情面だけで言えばそうなのか。
「……そう、でしょうか」
「うん…そして僕好みになってくれたんだろう?そう思ったら…心持ちが変わらないか?」
「……」
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