恋を知らないセクレタリー・ドール…心が無くても雇っていただけますか?

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
64 / 85
12章…血統の価値

64

しおりを挟む

「落ち着いたかな……前に…ヨコハマの試合を観に行ったろう、その時君は本気で応援していたろう?」

 そうだ、初めてのスタジアムでの観戦は周りのファンとの一体感にえも言われぬ高揚感を得た。

 皆で同じものを応援する喜び、興奮、そして達成感…あの時私は確かに地元球団・ヨコハマシーサイドドリームスのファンだった。

 和臣さんの趣味だからといって彼と同じ年数だけ親しんでいるんだから当然か、無意識に試合情報をチェックしてしまうくらいには私は馴染んでいるし自前のレプリカユニフォームだって毎年買い足してしまっている。

「……」

「サワタリ選手の一軍復帰が決まったとき、君はいち早く僕に連絡をくれた。復帰戦で彼がホームランを放った瞬間、あれはテレビ観戦だったが…君は僕よりも先に『やった!』と叫んで僕の手を取り飛び跳ねて喜んだ。あれも作り物か?」

「……いえ…嬉しくて…つい…」

同じものを応援して喜びを分かち合って、メガホンを振って祝杯をあげて、世の中の人が当たり前にしていることを当たり前に出来ていた。

 いつからだ、私はどんどん人間になっていたのか。


 悩むことでもないのに口をへの字に曲げる私の煮え切らない様子を和臣さんはくすと笑い、ひたいをくるくる指でなぞって

「…聖良、君は…いつから僕に仕えると決められていた?」

と少し脱力して尋ねる。

「えぇと…15年以上は前…でしょうか」

「…人生の半分以上か」

「はい、それが何か?」

「いや…君は僕の趣味に合うよう学んだと言ったが…僕の情報を常に入手して更新して、僕の好みになるように気に入られるように自我形成する年齢から叩き込まれて…それってさ、もう許嫁いいなずけじゃないか?」

 またもや目から飛び出るうろこ、お金が絡んでいるからドロドロと汚らしい話だが感情面だけで言えばそうなのか。

「……そう、でしょうか」

「うん…そして僕好みになってくれたんだろう?そう思ったら…心持ちが変わらないか?」

「……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...